奈良教育大(奈良市)は9日、付属小学校で男子児童が同級生から1年以上にわたっていじめを受けて不登校となり、転校せざるを得なくなる事案があったとする調査報告書を発表した。男児の両親から相談を受けた担任の女性教諭らがいじめと認識せず、当時の校長にも報告していなかったという。
いじめを認定した報告書によると、男児は付属小3年だった2022年春以降、同じ学級の同級生数人から「死ね」などの暴言や暴力、大切にしている物を捨てられるなどのいじめを受けた。同年5~6月ごろには「(男児が)クラスでいらないと思うやつ(は手を挙げろ)」とクラスメートに挙手させるいじめもあったが、同席した担任は問題視しなかった。
母親は欠席が続くようになる前から相談を繰り返したが、副校長までしか情報共有されていなかった。23年8月に男児が転校した市内の別の小学校長が母親から事情を聴き、付属小の校長(当時)に連絡して発覚した。担任は同月から産休に入り、そのまま退職した。
記者会見した同大の宮下俊也学長は「教員の認識が不十分で、学校としても組織体制が欠如していた。不適切だったと言わざるを得ない」と陳謝した。
同大付属小では1月に九つの教科・活動で国が定める学習指導要領に沿わない不適切な指導をしていた問題が発覚したばかり。いずれの問題も校長に情報が共有されていなかった。宮下学長は、副校長が中心となり、校長を除いた内部のみで収めようとする運営体制だったことも原因だと認めた。
また、同大は報告書の一部をまとめた概要版しか公表しなかった。男児の保護者は概要版への記載内容が不十分だと反発。同大は、父親による「概要版には最も苦痛を受けたいじめが記されておらず、到底受け入れられない」とする所見を添付して公表した。【稲生陽】
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