議員バッジ多額の公費 時代に合わぬ(2024年4月9日『福井新聞』-「論説」)

議員バッジ」金価格高騰で見直し進む…

 

 国会議員や地方議員の襟元に光る議員バッジ。全国47都道府県議会のうち7割近くが、議員が当選するたびに新品を無償支給している実態が明らかになった。辞めた後に返却しなくてよい議会も多く、他人に譲渡することを禁じていない議会もある。バッジの材料となる金の高騰で調達コストは増える一方。物価高が市民生活を直撃する中、「身分証」としての機能にとどまるバッジに多額の公費が投入される状況は正直理解しがたい。

 共同通信の全国調査によると、32道府県の議会が当選ごとに新品を無償支給。改選時や失職した時も返却不要と回答したのは39都道府県議会だった。

 当選ごとでなく初当選時のみ渡すケースや、支給でなく「貸与」とした議会もあった。ただ、貸与と定めていても改選時や失職時に返却を求めていなかったり、返却を求めている議会でも「期限を設けておらず未返却の総数は不明」「返却依頼が徹底できていなかった」など、形骸化している実態が浮かび上がった。

 ちなみに福井では、14金製のバッジを初当選時に貸与し、辞職時などに返還を求めていたが先月、県議会議員記章規程を改正。素材を金メッキ製に見直し、貸与から交付に変更した。

 金価格の高騰で全国的に素材の見直しが進んでいることや、これまでに返還された中に議員互助会で議員が自費購入したレプリカの金メッキ製バッジが含まれていたことを踏まえた措置。現在貸与している14金製のバッジは、次回改選時に返還を求めるという。時代に合わせた対応といえるのではないか。

 一方、全国調査の結果で気になったのが、譲渡禁止の定めがないと答えた議会が7道府県あったこと。売却も可能で、議員への利益供与に当たるとの指摘がある。ネットなどで売買される可能性もあり、悪用されかねない。2022年には偽の国会議員バッジを着けた20代の男が外務省や警視庁丸の内庁舎などに侵入する事件が起きた。

 複数所有しているから大事さが薄れ、譲ったり紛失したりするのではないか。都道府県議の中には当選ごとの無償支給を辞退する動きもある。「いくつも必要ない」と2期目以降は希望者のみ自費で購入する制度とするよう求めた議員もいるが、議会による主体的な見直しにはほとんどつながっていないのが実情だ。

 初めてバッジをつけたときの感動を忘れず、重みをしっかりと受け止めて、自覚をもって議員活動に取り組んでほしい。