「令和」のように漢字2文字が通例の元号が…(2024年3月23日『毎日新聞』-「余録」)

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「初代」の完成は金の発見が不可欠だった。東大寺大仏殿の盧舎那仏座像(奈良の大仏)=奈良市で2020年10月30日、佐藤泰則撮影
「初代」の完成は金の発見が不可欠だった。東大寺大仏殿の盧舎那仏座像(奈良の大仏)=奈良市で2020年10月30日、佐藤泰則撮影

田中貴金属工業の金地金(インゴット)=東京都中央区で2022年11月9日午前9時56分、辻本知大撮影
田中貴金属工業の金地金(インゴット)=東京都中央区で2022年11月9日午前9時56分、辻本知大撮影

 「令和」のように漢字2文字が通例の元号が、4文字だった時期がある。奈良時代の749年から770年までの5元号で、最初の「天平感宝(てんぴょうかんぽう)」は国内で初めて金が採れたことを祝い命名した。東大寺の大仏建造にあたりメッキに必要な金がなく、完成が危ぶまれた。ところが、現在の宮城県涌谷町で採れた金が献上され、聖武天皇らを歓喜させたと伝わる

▲その金、価格上昇が続いている。国内外で今月、史上最高値を更新した。日本での店頭販売価格(田中貴金属工業)は1グラム1万1000円を超す

▲長期的な上昇に加え、ロシアのウクライナ侵攻やガザ地区情勢などの緊張、新型コロナウイルス禍以降の金融緩和などが誘因とみられる。日本の場合、円安もこれに拍車をかけた

▲金製品の買い入れブームなど、さまざまな余波が起きている。静岡県伊豆市のテーマパーク「土肥金山」が展示する重量250キロの金塊は、2005年設置時に約4億円だった時価が約29億円になった。30億円に達した際の記念行事を検討しているという。滋賀県議会は、昨年の改選から18金だった議員バッジの材質を節約のため「銀に金張り加工」に改めた

▲高騰は景気のいい話に聞こえるが、それだけではない。海外での金採掘を巡っては、過酷な労働環境や利権との結びつきも問題視されている

▲ちなみに元号にまで影響した献上金の重量は、約13キロだったという。金価格は国際平和や通貨の価値を映しだす。それだけに危うさもつきまとう、輝きの行方だ。