自転車に乗る人のヘルメット着用が努力義務化されて、今月で1年となった。ただ、街中を見ても、県内では依然として着用している人は少ない。入学、新学期のシーズンとなり、自転車の利用が増えることが想定される。「春の全国交通安全運動」がきのう始まった。改めてヘルメット着用の必要性を確認し、着用を習慣づけるとともに、交通ルール順守の意識を高める機会にしたい。
県内では昨年、自転車乗車中の事故で2人が死亡、132人がけがを負った。亡くなったのはいずれも高齢者でヘルメット非着用だった。努力義務化の前年から死者は1人減ったものの、負傷者は17人増えている。
警察庁によると、昨年までの5年間の統計で、着用していなかった人の致死率は、着用していた人に比べて約1・9倍高かった。自転車事故では、転倒などにより頭部を損傷するケースが多い。深刻な被害から身を守るにはヘルメットが有効であることが、こうしたデータからも明らかだ。努力義務で罰則がないとはいえ、着用を徹底したい。
しかし、装着率は低迷している。警察庁が昨年7月に実施した初の全国調査で、47都道府県の平均は13・5%だった。本県は3・5%にとどまり、都道府県別で下から3番目。最高は愛媛県の59・9%で、50ポイント以上の開きがあった。
ヘルメット着用に抵抗がある人は多いのだろう。髪形が気になったりするかもしれないが、命には代えられない。家庭や学校などで着用を勧め、着けるのが当たり前となるよう、一人一人の意識を変えていく必要がある。
着用を検討している人を後押しするため、購入費用を補助する取り組みが全国の自治体で広がっている。必要性を感じながらも一歩を踏み出せない人がいるかもしれない。行政だけでなく民間も含め、普及を加速させる取り組みが求められる。
春の全国交通安全運動の重点目標の一つに掲げられているのが、自転車利用時のヘルメット着用と交通ルールの順守だ。県や県警などは、努力義務についての広報、啓発に力を入れるほか、原則は車道通行といった「自転車安全利用五則」の徹底、イヤホンやスマートフォン使用時の危険性の周知などに取り組んでいる。
国は16歳以上の自転車の交通違反に反則金納付を通告できる青切符の導入、走行中のスマートフォンなどの使用(ながら運転)や酒気帯びの罰則新設を目指している。通常国会で審議中の道交法改正案が成立すれば、自転車の取り締まりが大きく変わる。利用者にはこれまで以上に、法令順守の責任が求められることになる。
自転車は子どもから高齢者まで手軽に乗れる交通手段だ。幅広い世代にルールを丁寧に周知し、事故の減少につなげていきたい。