自転車新ルール1年 ヘルメット着用徹底を(2024年4月8日『秋田魁新報』-「社説」)

 自転車に乗る人のヘルメット着用が努力義務化されて、今月で1年となった。ただ、街中を見ても、県内では依然として着用している人は少ない。入学、新学期のシーズンとなり、自転車の利用が増えることが想定される。「春の全国交通安全運動」がきのう始まった。改めてヘルメット着用の必要性を確認し、着用を習慣づけるとともに、交通ルール順守の意識を高める機会にしたい。

 県内では昨年、自転車乗車中の事故で2人が死亡、132人がけがを負った。亡くなったのはいずれも高齢者でヘルメット非着用だった。努力義務化の前年から死者は1人減ったものの、負傷者は17人増えている。

 警察庁によると、昨年までの5年間の統計で、着用していなかった人の致死率は、着用していた人に比べて約1・9倍高かった。自転車事故では、転倒などにより頭部を損傷するケースが多い。深刻な被害から身を守るにはヘルメットが有効であることが、こうしたデータからも明らかだ。努力義務で罰則がないとはいえ、着用を徹底したい。

 しかし、装着率は低迷している。警察庁が昨年7月に実施した初の全国調査で、47都道府県の平均は13・5%だった。本県は3・5%にとどまり、都道府県別で下から3番目。最高は愛媛県の59・9%で、50ポイント以上の開きがあった。

 ヘルメット着用に抵抗がある人は多いのだろう。髪形が気になったりするかもしれないが、命には代えられない。家庭や学校などで着用を勧め、着けるのが当たり前となるよう、一人一人の意識を変えていく必要がある。

 着用を検討している人を後押しするため、購入費用を補助する取り組みが全国の自治体で広がっている。必要性を感じながらも一歩を踏み出せない人がいるかもしれない。行政だけでなく民間も含め、普及を加速させる取り組みが求められる。

 春の全国交通安全運動の重点目標の一つに掲げられているのが、自転車利用時のヘルメット着用と交通ルールの順守だ。県や県警などは、努力義務についての広報、啓発に力を入れるほか、原則は車道通行といった「自転車安全利用五則」の徹底、イヤホンやスマートフォン使用時の危険性の周知などに取り組んでいる。

 国は16歳以上の自転車の交通違反反則金納付を通告できる青切符の導入、走行中のスマートフォンなどの使用(ながら運転)や酒気帯びの罰則新設を目指している。通常国会で審議中の道交法改正案が成立すれば、自転車の取り締まりが大きく変わる。利用者にはこれまで以上に、法令順守の責任が求められることになる。

 自転車は子どもから高齢者まで手軽に乗れる交通手段だ。幅広い世代にルールを丁寧に周知し、事故の減少につなげていきたい。