【ヘルメット義務化】さらなる啓発が必要(2024年4月3日『福島民報』-「論説」)

 自転車利用時のヘルメット着用が努力義務化され、今月1日で1年になった。県内は中学生の着用率はほぼ100%だが、高校生は1割に満たない。県警は県や県教委と連携し、高校の新1年生を対象にした交通安全教育などの対策に乗り出している。着用の効果をしっかりと伝え、安全を自ら守る意識を広げてもらいたい。

 警察庁の昨年7月時点のまとめによると、都道府県別のヘルメット着用率は平均13・5%、県内は4・3%で全国5番目に低かった。トップの愛媛県は59・9%に上り、中高生の着用率はほぼ100%だった。自転車通学の高校生が犠牲になる事故が相次いだのを受け、教育委員会が主導した通学時の着用義務化などの取り組みが実を結んでいるという。痛ましい事故を未然に防ぐため、行動範囲が広がる高校生への義務化も県内で推し進めたい。

 ヘルメットは転倒時に頭部への致命傷を防ぎ、被害を軽くする効果がある。2018(平成30)年から2022(令和4)年までの5年間で、自転車乗車中の事故による全国の死傷者は約40万人で、2005人が死亡した。頭部への衝撃が致命傷となったのは1116人で55・7%を占めている。このうち高齢者は750人、55・3%、高校生は25人、67・6%、中学生は7人、46・7%、小学生は14人、58・3%。小中学生に比べ、ヘルメット着用率の低い高校生は頭部への影響で亡くなる比率が高い。

 県内の高校生にヘルメットをかぶらない理由を県警などが聞いた結果、最も多かったのは「荷物になる」だった。学校なら教室に持参できるが、街なかでは手荷物になる。解消に向けては、駐輪場などに保管場所を設けるなどの手だても必要だろう。

 16歳以上の自転車の交通違反に交通反則切符(青切符)を導入する道交法改正案が、今国会で審議されている。成立すれば公布から2年以内に施行される。信号無視やスマートフォンを操作する「ながら運転」などが対象となる。

 県警が県内の高校1年生に行う交通安全教育ではヘルメットの着用とともに、新たな制度の周知も進めてほしい。大切な子どもたちの命を守るため、各家庭の役割も改めて確認したい。(湯田輝彦)