政治資金を巡るルールとマナー(2024年3月1日『佐賀新聞』-「有明抄」)

 きのう、自民党派閥の政治資金パーティーを巡る裏金事件で政治倫理審査会が開かれた。岸田文雄首相が出席したテレビ中継を見ながら、改めて「ルールとマナー」の違いについて考えた

◆ルールは決まりであり、破ると罰則がある。憲法で自由が保障されているとはいえ、みんなが自由を主張したら収拾がつかない。みんなが気持ちよく過ごせるよう、互いの自由を少しだけ制限するのがルールと思う。一方、マナーは守らなくても罰則はない。けれど、良いマナーを見ると気持ちいい。ルールが社会を回す歯車とすれば、マナーは潤滑油のようなものと感じる◆

翻って今回の裏金事件。政治資金規正法では、政治資金パーティーなどによる収入を政治資金収支報告書に記載することを義務づける。不記載や虚偽記載は当然ルール違反だ

◆この違反だけでも政治不信が募るのに、審査会の公開を巡ってドタバタした。公開はルールではないが、有権者に対するマナー。ルールさえ守れない人にマナーを求めても仕方ないのだろうか

政治資金規正法は「政治とカネ」の問題をただすために生まれた。抜け道が多いといわれるからこそ、政治家は率先して政治活動の中身を明確にし、お金に潔癖であるべきだ。それが最低限のマナーだろう。政治倫理審査会はきょうも開かれる。マナー向上を望む。(義)