手軽で環境に優しい移動手段である。安全に利用できる社会の実現に、つなげなければならない。
自転車に交通反則通告制度を適用する道路交通法改正案が国会に提出された。自動車などと同様に、交通違反をした人に「青切符」を渡し、反則金を納めさせる。
16歳以上が対象となり、信号無視や一時不停止といった112種類の違反に適用される。
反則金の額は原付きバイクに準じる。大半が5000~6000円となる見通しだ。成立すれば、2年以内に施行される。
背景には、自転車事故の深刻化がある。昨年は7万2339件発生し、3年連続の増加となった。全交通事故の23・5%を占める。
自転車に違反があったケースが7割に上る。人通りが多い歩道を我が物顔で走る例は後を絶たず、歩行者との事故も増えている。
利用者の違反を抑止し、安全意識を高めることが導入の狙いだ。
それには効果的な取り締まりが不可欠である。青切符の恣意(しい)的な交付により、自転車を利用しにくい事態を招いては、本末転倒だ。
警察庁は、警察官の警告に従わなかったり、他の車両や歩行者を危険にさらしたりする場合などに限ると説明している。
取り締まりは、自転車事故が多い時間帯、場所で重点的に実施するという。現場に徹底させ、国民にも周知する必要がある。
交通安全教育の充実も必須だ。車道の左側走行が原則などのルールを、社会に浸透させる取り組みが重要になる。
警察庁の有識者会議は、官民による協議会を設け、安全教育のガイドラインを策定するよう提言した。速やかに進めるべきだ。指導者の確保も課題である。
自動車の運転手への働きかけも欠かせない。道交法改正案では、自転車を追い抜く際に十分な間隔がなければ、安全な速度で通行することを罰則付きで義務づける。
自転車レーンをはじめ、走行空間の確保はまだ途上だ。レーンが路上駐車で塞がれているところも目に付く。自転車が安心して車道を走れる環境整備が求められる。
自動車優先の交通体系を改め、多様な乗り物や歩行者が、限られた道路スペースで共存できるようにしていくべきだ。