建設の24年問題克服へ工夫を(2024年4月7日『日本経済新聞』-「社説」)

 

建設現場はどこも繁忙を極めている(3月、大阪市) =共同

 
 今月から建設業界にも時間外労働の上限規制が適用された。かねて人手不足が深刻な業界であり、工事の長期化などが懸念される。官民の工事を発注する側も協力し、設備投資などの経済活動に支障を来さないようにしたい。

 資材価格の上昇も続く。こうした環境変化を乗り切るには業界全体の生産性を高めるほかない。建設業はインフラ維持や災害対応を担う存在でもあり、持続性が高まるよう後押しする必要がある。

 建設業の就業者数は500万人近い。産業別では製造業、卸売・小売業、医療・福祉に次ぐ第4の規模だが、労働時間は他の産業より長い。若者が敬遠する一因であり、残業規制は欠かせない。

 建設現場でも週休2日制の導入は進みつつある。無理な工期では受注しない建設会社が増え、発注者側も配慮するようになってきたという。望ましい傾向だ。

 ただ働く時間で収入が決まる現場の職人は労働時間の短縮による収入減を懸念する。残業規制の定着には職人の賃上げが重要だ。

 政府は法改正で後押しする。極端に短い工期での受注を禁じ、職人の労務費に目安を設けて大幅に低い場合は公表する。資材高騰時などは発注者が契約変更の交渉に応じることを努力義務にする。

 いずれも建設業者が「この工期や価格では発注者も違法性が問われかねない」と交渉力を高める武器になる。発注者優位の慣行が見直され、価格や工期が合理的な水準に落ち着けば、建設業界全体の持続性は高まる。

 建設現場のデジタル化、省力化も急ぎたい。事務作業の分担や、部材の工場生産による現場作業の軽減が進めば、品質が安定し、女性も働きやすくなる。

 特定技能の外国人労働者にも頼る必要があろう。政府は建設分野の受け入れ枠を24年度からの5年間に倍増させる。

 規制で直ちに工事の止まる現場が頻発する事態は避けられそうだが、急ぐ必要のある工事に遅れが生じないよう目配りすべきだ。