災害時 手話ニュース必要(2024年5月3日『しんぶん赤旗』)

全日本ろうあ連盟理事長 田村委員長らに要望語る

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(写真)全日本ろうあ連盟の石野理事長(右)と懇談する田村委員長(左)=3月27日、東京都内

 47都道府県に傘下団体がある全国で唯一のろう者(手話を言語とする聴覚障害者)の団体「全日本ろうあ連盟」。5月で創立77年を迎えます。連盟の石野富志三郎(ふじさぶろう)理事長と日本共産党の田村智子委員長、大門実紀史政策委員会副委員長が、ろう者に関する政治的な課題などをめぐって、なごやかに語り合いました。党障害者の権利委員会委員の堀田美鈴さんが同席しました。

 石野さんは、委員長になった田村さんへの期待を語りつつ、「しんぶん赤旗」日曜版のスクープに端を発した自民党の裏金問題など「国会がいま、大変な状況になっていますね」と切り出しました。田村さんは「ゆきづまる自公政権を退陣に追い込むために、野党共闘を前に進めます。一方で、障害者政策は超党派ですすめなければならない。より良い政策にするために率直に話を聞かせてもらえれば」と応じました。

能登半島地震

 能登半島地震が発生した1月1日、NHKEテレで予定されていた午後6時55分からの手話ニュースが放送されませんでした。

 全日本ろうあ連盟はNHKに要望書を提出しました。「手話ニュースが聞こえない人にとってとても重要な情報源です。放送中止は、手話言語で生活をする聞こえない人を軽視することだ」と指摘し、災害時には「公共放送による迅速にして正確な情報を手話言語と字幕で提供」するよう要請しました。

石野さん「不妊手術強制の被害者も」

田村さん「人権と尊厳守るため尽力」

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(写真)懇談する全日本ろうあ連盟の石野理事長(右)と日本共産党の田村委員長、大門政策副委員長(左側)=3月27日、東京都内

 2011年の東日本大震災時に、ろうあ連盟は全国手話通訳問題研究会と日本手話通訳士協会とともに聴覚障害者災害救援中央本部を設置。今回の地震でも聞こえない仲間や手話関係者の支援をし、情報発信をしています。

 東日本大震災の経験から、ろう者のいる避難所には手話通訳者を配置するようになっています。

 能登半島には手話通訳者が必要なろう者が62人いると石野さん。聴覚障害があり手帳を持つ人は500人程度だといいます。一方、各自治体が手配できる通訳者は7人程度で、登録手話通訳は11人。そのためローテーションを組んで手話通訳者を石川県聴覚障害者センターなどから送るなど支援をしています。

 手話通訳者が少ないだけでなく、被災した高齢ろう者の多くが能登地方特有の手話を使うため手話が通じないことがあると、石野さんは現場の実情を語っていました。

デフリンピック

 来年11月15日~26日まで、「東京2025デフリンピック」が開催されます。障害者が参加するパラリンピックにはろう者部門がありません。デフリンピックはろう者のためのオリンピックです。70~80の国・地域から選手3000人をはじめ審判、スタッフなど総勢約6000人が集まります。

 「100周年の記念大会となるので、必ず成功させたい。共産党も含む超党派でぜひ、応援して」と石野さん。国際手話ができる人が少ないことと、参加要件を満たしている選手を発掘することが課題だと語ります。

 デフリンピックの参加要件は、補聴器などを外した状態で両耳で聞こえる一番小さな音が55デシベル(dB)超(普通の声での会話が聞こえない程度)であることなどです。他方、日本の障害認定基準では、70dBが最も軽い聴覚の程度とされています。

 田村さんは「日本の障害認定基準が厳しく、他国と比較しても対象者の範囲が狭いということですね」と指摘し、国際水準になるよう取り組みたいと述べました。

手話言語法制を

 障害者権利条約は、「言語」について「音声言語及び手話その他の形態の非音声言語」と定義しています。

 全日本ろうあ連盟は2010年から、手話言語法の制定を求め運動を続けています。聞こえる人が使う日本語(音声言語)と手話とは、文法が異なっており、別の言語だからです。

 連盟は、「手話言語法制を求める意見書」自治体議会請願運動を全国的に展開。16年3月3日、すべての自治体議会で採択されました。「史上初の快挙といえます」と石野さん。「手話を言語と位置付けることで、手話を獲得し、手話を使うなどの権利性を保障することになります」と説明します。

 「言語と位置付ければ、教育や研究が必要になりますね」と田村さん。大門さんは「手話教育を受ける権利も保障されます」と指摘しました。

 旧優生保護法(1948~96年)の下で、「不良な子孫の出生を防止する」ためなどとして約2万5千人もの人が不妊手術を強いられる人権侵害がありました。被害者の中にはろう者もいます。

 全日本ろうあ連盟は2018年に調査を実施。妊娠が分かると「不幸になる」と言われてやむなく中絶した、「結婚したいなら断種手術しなさい」と言われ泣く泣く手術を受けた…。男性45人、女性125人計170人の被害者が判明しました。

 石野さんは調査に取り組んだ背景について、「手術を強制されたろう者のほとんどは泣き寝入りせざるを得なかった。個人の問題として抱え込んでいるろう者が多くいました」と話します。「被害者を多く出した背景に、かつてはろう者は手話を使わせてもらえず、意思疎通がはかれなかったこともあります。本人が情報を入手できず、判断できないまま手術を強いられてしまったケースが多くあります」

 優生手術の被害者らがいま、国を相手に裁判でたたかっています。原告39人のうち17人がろう者です。39人のうち6人はすでに亡くなっており、原告らは早期全面解決と謝罪を求めています。

 田村さんは、党史『日本共産党の百年』で党が旧優生保護法の成立と改定に賛成したという重大な誤りがあったことを認め、反省するとしたことを紹介。「今後もすべての人の権利と尊厳が守られるよう力を尽くします」と述べました。

 旧優生保護法問題がテーマの映画「沈黙の50年」の上映が5月から始まります。全日本ろうあ連盟は各地での上映会開催を呼びかけています。