下請法違反の日産、「賃上げ促進税制」の適用除外…収益面に悪影響の可能性(2024年4月6日『読売新聞』)

 下請け業者への納入代金を発注後に減額した下請法違反問題を受け、日産自動車が、賃上げを行った企業の法人税を減額する「賃上げ促進税制」を利用する資格を失ったことがわかった。日産はこれまで同税制を利用しており、違反問題が収益面にも悪影響を及ぼす可能性がある。

日産自動車の本社

日産自動車の本社

 同税制は2013年度に始まったもので、岸田政権は企業の賃上げを後押しするために制度を拡充した。大企業では24年度以降、賃上げによる給与の支払総額の増加分について最大35%が減額される仕組みとなっている。

 日産のような大企業が同税制を利用するには、まず自社のホームページに、従業員への利益還元や取引先への配慮に関する経営方針を掲示しなければならない。その上で、政府などが作る専用サイトで、取引先への不合理な価格交渉を行わないことを約束する「パートナーシップ構築宣言」を公表する必要がある。今月5日時点で、トヨタ自動車など約4万4000社が掲載されている。
 

 

 日産は今年3月、下請法違反で公正取引委員会の勧告を受け、所管省庁の経済産業省を通じて専用サイトから掲載が削除された。一度削除されると1年間は再掲載されないため、日産は少なくとも1年間は同税制を利用できない。

 日産によると、22年度以前の納税分については同税制を利用していたという。日産は23年春闘で3・4%の賃上げの実施を決めたほか、24年春闘では5%という高水準の賃上げの実施を労働組合に回答した。違反問題がなければ、申請によって23年度の納税分の法人税も減税措置を受けられた可能性がある。

 財務省によると、同税制を導入した13年度は減税額が計420億円、適用件数は約1万件だったが、22年度には計5150億円、約21・5万件に拡大した。大企業の場合は、年間数十億円以上の減税効果を得られるケースもあるという。

 下請法違反の問題を巡り、日産は公取委から違法認定を受けた下請け業者36社に約30億円を返金した。取引先との信頼回復を急ぐため、公取委の認定では対象外となった企業についても独自に返金する方向で検討している。