二階氏に続き世耕氏も…和歌山政界に激震 裏金処分で対立表面化(2024年4月5日『毎日新聞』)

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自民党県連の事務所=和歌山市で、安西李姫撮影
 
自民党県連の事務所=和歌山市で、安西李姫撮影

 二階氏に続いて世耕氏まで――。自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件で、和歌山県内政界に大きな影響力を持つ世耕弘成参院議員(61)=5期目=に4日、離党勧告処分が下り、自民党県連が揺れている。一連の裏金事件の政治責任を取って二階俊博衆院議員(85)=和歌山3区、13期目=が10日前に次期衆院選不出馬を表明したばかりで、衆参の実力者が相次いで表舞台から去る事態に県連関係者は危機感を募らせている。一方、県内では事件に対する世耕氏のこれまでの対応への批判の声も上がっている。【駒木智一、安西李姫、松田学、大澤孝二】

 世耕氏は1998年の参院補選で初当選。その後、内閣官房副長官経済産業相を経験し、2019年9月には参院幹事長に就任。政府・与党の要職を歴任して党重鎮の立場を築いてきた。だが、裏金問題を受けて23年12月に参院幹事長を辞任。この日、処分を受けて離党届を提出した。県連幹部は「県連が機能不全に陥りかねない」と今回の処分が及ぼす影響を危惧する。

 ある自民県議は「世耕さんは安倍(晋三)さんの側近として大局的に県を見てくれていた。いつまでも二階先生にだけ頼るわけにはいかないという話もあり、次は世耕さんに頑張ってもらおうというところだった」と残念がった。山下直也県連幹事長は「二階さんも世耕さんも和歌山にとって大きな存在感があった。国民の政治不信は大きく、県連としても改めて信頼を得られるように謙虚に取り組んでいかなければいけない」と話す。

 今回の重い処分の背景には、二階氏と世耕氏のあつれきがあるとの見方もある。衆院くら替えをにらむ世耕氏と二階氏は地盤が重なり、次期衆院選で適用される「10増10減」に伴う区割り変更後の新2区を巡って水面下で綱引きが続いてきた。

 「二階さんのすご腕、寝技にしてやられた格好だ」と唇をかむのは世耕氏に近いベテラン県議。当初は党の8段階の処分のうち4番目の重さの「選挙における非公認」にとどまると考えていたというが「二階さんの不出馬表明で『安倍派幹部にも重い処分を』という空気に変わった」と話す。二階氏に処分は下されず、「二階さんに政局における嗅覚の差を見せつけられてしまった」と肩を落とす。

 一方、二階氏に近い県議は「世耕さんが党を離れることになり、新2区の候補者選びを一気に進められる」と語る。党籍を失う世耕氏は二階氏の後継選びで表立って影響力を行使できなくなり、厳しい処分を受けたことでくら替えの動きも難しくなったと見ているからだ。来年に世耕氏が改選を迎える参院選についても「党が公認候補を出さなければ、世間から『処分は形だけ』と見られてしまう」と指摘し、県連内から対抗馬擁立の声が上がる可能性も示唆した。

 両氏を巡って周囲が争う状況には苦言を呈する声も。ある県幹部は「国への要望で、今後頼りにする人がいなくなる。県のことを思えば

 日本維新の会県総支部幹事長の浦平美博県議も「何が問題だったのか何ら説明していない。秘書のせいにしていたが誰が雇ったのか。国民は納得いかないだろう」と批判。新2区に候補者の擁立を決めている共産党の下角力県委員長は「新1区でも参院選でも候補者の擁立を進め、自民党政治と戦わなければならない」と話す。

 田辺市の60代の自営業男性は「真実を何も語っていないのに、離党処分で許されたわけではない。保身が第一で県民や国民をばかにしている。説明できないなら議員辞職をすべきだ」と語気を強めた。新宮市の掃部(かもん)庄吾さん(62)は「政治力学が関わっていることなので、それまでの対応の仕方や処分の軽重は一概にどうこう言えない」とし、「世耕氏、二階氏の功績は認めるが、新しい風を吹かせる政治家が出てくることを祈りたい」と語った。