第2回AV産業の適正化を考える会シンポジウムに参加した星乃莉子(撮影・村上幸将)

 

2022年(令4)6月に施行されたAV出演被害防止・救済法(AV新法)の見直しを検討する2回目のシンポジウムが4日、都内で開かれた。

 AV新法は、AVの出演被害を防ぐ法律として議員立法により制定。女優として出演した女性を守る法律として施行された一方で

<1>AV撮影については、契約の書面交付から1カ月の撮影は禁止

<2>全ての撮影終了から4カ月は公表を禁止、公表の前には出演者へ事前確認を義務づける

<3>制作公表後1年間、出演者は無条件で契約解除が可能

などの規定が、制作の実情に合わず、制作本数が減少。そのため、自らの意志で業界に入り、AV出演で生業を立てていながら、引退を余儀なくされる女優も出てきており、制作会社や制作者、女優らの間から実情に合わないといった声が出ている。

法律家の間でも<1><2>の「1カ月-4カ月ルール」が女優、男優を含め、職業選択、営業の自由を広く制限しているなどとの指摘がある。また、表現の自由においても過度の規制をしている、との指摘もある。

「施行後二年以内に施行状況等を勘案し、検討が加えられ、その結果に基づいて必要な措置が講ぜられるものとする」などとした見直し規定があり、今年6月で施行から2年を迎えることを踏まえ、シンポジウムを主催した「AV産業の適正化を考える会」は見直しの必要性を訴えている。

AV新法が制作の実態と乖離(かいり)した最大の要因は、女優、制作側の意見を聞くなどの実態調査がないまま拙速に立案、施行されたことだと業界関係者は訴える。22年3月の参院決算委員会で、立憲民主党の一部議員から岸田文雄首相に、成人年齢の引き下げに伴い、18、19歳のAV出演の、取り消し権の可能性について質問があり、同首相が「超党派の検討を注視する」との答弁をしたことに端を発した。

その後、4月26日に自民党公明党立憲民主党日本維新の会、国民民主党共産党の6党が早急な法制化の方針で合意すると、同5月25日に衆院内閣委員会で議員立法が提出され、衆院の可決を経て、同6月15日の参院本会議で可決と、わずか1カ月半という短期間で施行された。

第2回シンポジウムには、女優の星乃莉子も参加し、当事者としての主張を展開した。まず「1カ月-4カ月ルールの問題は、内容が発表できず、商売そのもの自由がないとデビューして感じた」と訴えた。その上で「私たちを全く知らない人から、職業の決めつけで制限される。真剣に取り組んでいる人たちでさえ、被害者だと決めつけてしまうところに、悲しいというか尊厳を害されている感じがする」と、AV新法により、AVに出演していることで被害者だと決めつけられていると訴えた。

さらに「生活に関わり、人生を左右する…女性1人の人生、尊厳を左右する。(それを)たった3カ月(の審議)で決めるのではなく、当事者の意見を聞いてほしい。私の表現の仕方、自由が奪われる。自分の人生を考えるきっかけになった。国会の方々に自分たちの小さい声が届くことを願っています」と訴えた。

この日は、日本維新の会の堀場幸子衆院議員、NHKから国民を守る党の浜田聡参院議員、国民民主党樽井良和氏が出席し、立憲民主党川田龍平参院議員もリモートで参加した。川田氏は「当初の規制から、法規制が大きくなったと感じます。業界の皆さんの意見を聞く時間がなかった、拙速に決めたところがあると思う。この2年…どうなのか検証すべき。表現規制の問題、人権の問題を含め、しっかりと検証した上で見直しをする方向性を話し合っていければ」と施行されて2年のAV新法の、検証の必要性を口にした。

堀場氏は「法律があって(女性を)守ることができれば良いという1つの論点があった。労働として、女性が選択肢として持っておくべきだと考えている。非常に困っている人がいることもしっかり理解し、改正も頑張らせていただきたい」と語った。一方で「女性で、こういう声を出す議員が少ないのも寂しい」とも語った。

パネリストを務めた経産省出身の制度アナリスト宇佐美典也氏は、複数の議員が22年4月1日にAV出演強要問題に対する新法の制定を岸田文雄首相らに緊急要請した立憲民主党が、AV新法施行に主導的な立場を取っているとみられているが、業界の実態に沿わない法律になったのは自民党公明党の政権与党だと訴えた。

宇佐美氏は、立憲民主党は18、19歳のAV出演の、取り消し権の部分に主眼を置いており、AV業界の考え方にも近いものだったと指摘。一方で、自民党公明党は同4月13日に、成人年齢引き下げの枠を超えて全年齢を対象とする議員立法による措置の可能性を示唆しており、そのことが大きな問題となったと指摘した上で「立憲民主党スケープゴートにしている。自公に向き合ってほしい」と訴えた。