空爆によってイラン精鋭部隊の革命防衛隊の幹部らが死亡したという。イスラエル側は今回の攻撃を公には認めていない。
イスラエルとイランはかねて互いを脅威とみなしてきた。暗殺やサイバー攻撃で応酬する一方、直接の交戦は慎重に避けてきた。
軍事行動のハードルが下がる背景となったのが、パレスチナ自治区ガザで長引くイスラエルとイスラム組織ハマスの戦闘だ。7日で開始から半年がたつが、収束はみえない。衝突の広がりを避けるには、危機の震源であるガザの戦闘を終わらせなければならない。
保健当局によれば、ガザでの戦闘による住民の死者は3万2千人を超えた。飢餓の恐れも強い。民間人のこれ以上の犠牲や人道危機の深まりは看過できず、支援物資の搬入を加速するのが急務だ。
即時停戦を求める国際的な圧力は強まっているが、イスラエルのネタニヤフ首相は強硬姿勢を貫くことで国内の求心力を保とうとしている。ガザだけでなく、北隣のレバノンやシリアでも自国への脅威を軍事力で排除する構えだ。
イランの最高指導者ハメネイ師は3月末、ハマスの最高指導者と会い親密さを誇示した。レバノンやシリアでもイランが裏で糸を引いているとイスラエルはみる。
イランは経済が苦しく、イスラエルの消耗を歓迎こそすれ、自らが戦闘に引きずり込まれる事態は望んでいない。だが今回の空爆を受けて、本格的な報復に乗り出すことになれば厄介だ。
イランとイスラエルの軍事衝突は、世界のエネルギー供給や企業活動に多大な制約を与える。イランの代理勢力には国際海運の要衝である紅海で商船攻撃を重ねるイエメンの武装組織もある。世界経済への打撃はイスラエルとハマスの衝突の比ではない。
国連安全保障理事会は今回の攻撃について協議するため、緊急会合を招集した。中東危機の負の連鎖を何としても食い止めるため、日本を含めた国際社会は足並みをそろえて行動する必要がある。