産経新聞出版は威力業務妨害罪で警視庁に被害届を出した。一部の書店は店頭での発売開始を延期する対応を迫られた。

 憲法第21条は「集会、結社及(およ)び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する」と明記している。書店や出版社に対して暴力をちらつかせて言論を封じようとする脅迫は、趣旨の方向性にかかわらず、国民が享受する自由、民主主義に挑戦する暴挙だ。

 産経新聞社と産経新聞出版はこのような脅迫に屈しない。最大限の言葉で非難する。

 原著は米国のジャーナリストによるノンフィクションで2020年に出版された。ブームに煽られて性別を変更し、回復不能なダメージを受けて後悔する多くの少女らに取材しており、独仏など各国で翻訳されて話題となった。

 日本では出版大手のKADOKAWAが「あの子もトランスジェンダーになった SNSで伝染する性転換ブームの悲劇」の邦題で発行を予定していた。だが、「トランスジェンダーへの差別だ」とする抗議や批判があり、昨年12月に発行中止を決めた経緯がある。

 その後、産経新聞出版が発行を決めた。米国でベストセラーになるなど外国で評価を得た書籍が日本で出版できなくなることに危機感を覚えたからだ。LGBTなど性的少数者への差別があってはならないのは当然だが、そもそも翻訳本は差別を助長するものではない。それでも同出版には発行中止を迫るメールが届くようになった。

 性の多様化が進む米国の子供たちや家族が今、どのような状況にあるのか。その一端を示すのが翻訳本だ。読者にトランスジェンダーについて考える材料を提供するのが狙いである。

 翻訳本の内容に批判があるなら、それはあくまで言論でなされるべきである。暴力や脅迫は断じて認められない。

 

KADOKAWA『あの子もトランスジェンダーになった』」
あの“焚書”ついに発刊

「今年最高の1冊」エコノミスト
「今年最高の1冊」タイムズ紙(ロンドン)
「今年最高の1冊」サンデー・タイムズ

ヘイトではありません
ジェンダー思想と性自認による現実です

世界9か国翻訳
日本語版緊急発売

思春期に突然「性別違和」を訴える少女が西欧諸国で急増しているのはなぜか。
かつては性同一性障害と呼ばれていた「性別違和」は幼少期に発現し、およそ全人口の0.01パーセントに見られ、そのほとんどが男児だった。
「性別違和」の急増や男女比の突然の逆転——何が起こっているのか。

・SNSとインフルエンサーたち
・幼稚園からジェンダー思想を教える学校教育
精神科医の新標準「ジェンダー肯定ケア」
・思春期ブロッカー・ホルモン補充療法・乳房切除手術
・権威すらもキャンセルされる活動家の激しい抗議
……約200人、50家族を取材した著者が少女たちの流行の実態を明らかにする。

「それまで違和感を覚えたことはなかったのに、学校やインターネットで過激なジェンダー思想に触れて傾倒した十代の少女たちがもてはやされている。そうした少女たちの後押しをしているのは、同世代の仲間たちのみならず、セラピスト、教師、インターネット上の著名人たちだ。だが、そんな若さゆえの暴走の代償はピアスの穴やタトゥーではない。肉体のおよそ四五〇グラムもの切除だ。(中略)いわばフォロワーになっただけの思春期の少女たちに、そのような高い代償を払わせるわけにはいかない」(「はじめに」より)

米国ベストセラー『Irreversible Damage: The Transgender Craze Seducing Our Daughters』の邦訳版

【目次】
本書への賛辞
はじめに 伝染
1 少女たち
2 謎
インフルエンサー
4 学校
5 ママとパパ
精神科医
7 反対派
8 格上げされたもの、格下げされたもの
9 身体の改造
10 後悔
11 あと戻り
おわりに その後
謝辞
解説 岩波明
原注・参考文献

アビゲイル・シュライアー(Abigail Shrier)
独立系ジャーナリスト。コロンビア大学で文学士号(Euretta J. Kellett Fellowship)、オックスフォード大学で哲学士号、イェール大学法科大学院で法務博士の学位を取得。2021年にバーバラ・オルソン賞(ジャーナリズムの優秀性と独立性に贈られる)を受賞。また本書はエコノミスト誌とタイムズ紙(ロンドン)の年間ベストブックに選ばれた。