「子供の頃……『マッチ売りの少女』を読んで涙ぐむ代りに『オバQ』や『ゲゲゲの鬼太郎』に夢中だったのであろう」…(2024年4月3日『毎日新聞』-「余録」)

子どもと語り合うアンデルセンの像=2023年10月28日、千葉県船橋市のふなばしアンデルセン公園で竹中拓実撮影

子どもと語り合うアンデルセンの像=2023年10月28日、千葉県船橋市ふなばしアンデルセン公園で竹中拓実撮影

コペンハーゲンの人魚姫の像=デンマークで2014年7月17日、真野森作撮影
コペンハーゲンの人魚姫の像=デンマークで2014年7月17日、真野森作撮影

 「子供の頃……『マッチ売りの少女』を読んで涙ぐむ代りに『オバQ』や『ゲゲゲの鬼太郎』に夢中だったのであろう」。向田邦子さんが43年前の随筆で「アンデルセンてご存知?」に「パン屋でしょ」と答える若者に憤慨していた

▲「人生の折り返し地点を過ぎてしまったなあ、という実感があった」という。今ではオバQ世代もとっくに折り返し地点を過ぎたが、デンマークの偉大な童話作家の名は健在だ

▲明治期に初訳された「裸の王様」以来多くの童話が紹介され、教科書にも取り上げられた。「雪の女王」や「人魚姫」などディズニーアニメの元になった話もある。「みにくいあひるの子」などストーリーが頭にすり込まれている

▲2日はアンデルセンの誕生日にちなんだ「国際子どもの本の日」。ドイツ出身のユダヤ系女性作家、イェラ・レップマンさんが「子どもの本は世界の架け橋」と訴え、57年前に制定された

 

▲今年は日本が世界共通のポスター作製を担当し、スロバキア在住の絵本作家、降矢ななさんがデザイン。「魔女の宅急便」などで国際アンデルセン賞を受賞した角野栄子さんが「翼に乗って物語は旅する」とメッセージを寄せた

▲出版不況でも児童書の売り上げが伸びているというのは心強い。1981年に台湾での航空機事故で亡くなった向田さんには知る由もなかったが、作家の名を冠したパン屋さんは83年から童話の公募コンテスト「メルヘン大賞」を続けている。41回目の今年の受賞作が2日に発表された。