石巻・大川小児童の実話、本に 芽吹いた朝顔「一緒だよ」(2024年3月16日『共同通信』)

 
 自主制作した児童書「朝顔の声」を手にする童話作家の千葉直美さん=12日、宮城県石巻市

 自主制作した児童書「朝顔の声」を手にする童話作家の千葉直美さん=12日、宮城県石巻市

 2011年3月の東日本大震災で児童・教職員計84人が犠牲になった宮城県石巻市立大川小の児童をモデルに、石巻市在住の童話作家千葉直美さん(61)が児童書「朝顔の声」を自主制作した。児童が残した朝顔の種を両親がまき、芽が出た実話を基にした。千葉さんは「いつも一緒だよ、というメッセージだと思う。命の大切さを知ってほしい」と話す。
 モデルは佐藤美広さん(62)、とも子さん(60)夫妻の一人息子で、津波で犠牲になった3年生の健太君=当時(9)。震災後、とも子さんは健太君の机の引き出しから鉛筆で「みらいのじぶんへ」と書かれた小さな袋を見つける。中に入った朝顔の種20粒の一部を14年、庭にまくと芽が二つ出たという。
 新聞記事でこの話を知った千葉さんは、知人を通じてとも子さんに会い、電話などで取材を重ねた。人懐っこかった健太君が1年生の時に育てた朝顔から種を採り、近所にお裾分けしたこと、両親が健太君の写真の前で毎晩眠り「会いたい」と願っているエピソードなども物語に盛り込んだ。
 
震災犠牲「けんた君」の実話、児童書に 「朝顔の声」発売 石巻の千葉直美さん作、英訳付き(2023年12月26日『河北新報』)
 
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けんた君と両親の様子が2カ国語で書かれた「朝顔の声」

 東日本大震災による津波で犠牲になった石巻市旧大川小3年の「けんた君」(9)を基に制作された児童書「朝顔の声」が1日から販売されている。

 けんた君は、朝顔の種の入った紙袋に「みらいのじぶんへ」と書いて机の引き出しにしまっていた。震災後、母親が見つけたことを知った知人を通して同市在住の童話作家千葉直美さん(61)の耳に伝わり、千葉さんが児童書にしたいと両親に申し出た。同市在住の画家阿部悦子さんが挿絵を、ニューヨーク市在住の翻訳家市沢マリアさんが翻訳を担当した。

 本文が日本語と英語で書かれており、内容は実話に基づいている。けんた君の両親が2014年に朝顔の種を植えて花が咲く様子とともに、両親とけんた君が共に過ごした記憶などが描かれた。けんた君の残した朝顔を「お父さんとお母さんと共に生きる希望の花」として「いつも一緒です」と締めくくった。

 文を担当した千葉さんは「幼い子どもたちが亡くなった痛ましい事故。震災を忘れることなく、一人一人の命を覚えていてほしい」と呼びかける。

 B5判、14ページ。石巻市門脇町2丁目のまねきショップで販売されており、1冊1000円。郵送を希望する場合は千葉さんへ連絡する。連絡先は招きショップ090(9536)2354、千葉さん090(2979)9503。