【米・食味国際大会】県は主体的に参画を(2024年4月1日『福島民報』-「論説」)

 コメの味と品質を競う米・食味分析鑑定コンクール国際大会が2026(令和8)年度から3年間、本県で会場を替えて開かれる。県産米のおいしさ、東日本大震災東京電力福島第1原発事故からの農業再生に懸ける努力と成果をアピールする絶好の機会となるが、準備に奔走するのが開催・周辺市町村中心なのは、ふに落ちない。広域自治体である県が主体的に運営に携わるべきではないか。

 大会は米・食味鑑定士協会と開催自治体などが実行委員会を組織して1999(平成11)年度から開いている。約5千検体が出品され、厳正な審査を経て品質を評価する場として生産・流通関係者から重要視されている。

 2009年度会場だった天栄村に協会から連続開催の提案があり、村が中心となって県内市町村に打診してきた。1年目の2026年度は須賀川市、2年目は会津若松市、第30回の節目となる3年目は双葉郡を想定している。

 風評が今なおのしかかる本県での連続開催だけに意義は大きく、戦略的に生かす発想がほしい。県産米の品質向上はもちろん、生産・流通のプロに営農の現状を継続して見てもらい、商談にこぎ着ける舞台となるからだ。

 今年度は、実施体制づくりを本格化させる大事な年となる。関係市町村は予算を確保し、運営要員の確保・養成や出品検体増に動き出す。関係者からは「円滑に運営し、県全体の農業振興につなげるためにも県の積極的な参画が欠かせない」との声が上がるが、県の関与は限定的であり、腰の重さが気になる。

 本県農業は復活途上だ。農林水産省の統計によると、2022年度の農業産出額1970億円は震災・原発事故発生前の実績に戻らない。その中でコメは3割、589億円を占める稼ぎ頭だ。ただ、昨年の日本穀物検定協会の食味ランキングで県産米は5段階評価で最上位の「特A」を獲得できなかった。

 新品種「福、笑い」の消費拡大策は緒に就いたばかりであり、著名芸能グループ名を冠した県TOKIO課とも連動すれば発信力はさらに強まるはずだ。県と市町村がこれまで以上に足並みをそろえていかないと、農業の躍進はおぼつかない。大会の成否は試金石となる。(鞍田炎)