新型コロナ 予防の大切さは変わらず(2024年4月1日『信濃毎日新聞』-「社説」)

 きょうから新型コロナウイルス感染症への対応は、通常の医療体制の中で行われる。季節性インフルエンザなどと同じ扱いだ。

 感染症法上の位置付けが5類となった昨春以降、段階的に縮小されてきた治療や入院の公費支援が、3月末をもって終了した。ワクチン接種も高齢者らを対象に年1回実施する定期接種に移行し、原則有料になる。

 だからといって、感染予防の重要性が減るわけではない。新型コロナの感染が健康にどのような影響を及ぼすのかは、解明されていない点も多い。基本的な感染防止対策を引き続き心がけたい。

 ウイルスは短いスパンで変異を繰り返してきた。この冬の流行「第10波」が長く続いた要因の一つは、オミクロン株の派生型「JN・1」が国内に流入し広がったためだ。

 新たな変異株の発生や流入について、今後も監視の手を緩めてはいけない。

 重要性が増しているのが、後遺症への対策だ。感染した人の一定数が後遺症に苦しんでいる実態が、診療データや調査の蓄積によって徐々に明らかになってきた。

 出現する症状はさまざまだ。だるさや頭痛、せき、息切れ、胸の痛み、記憶力の低下、嗅覚や味覚の障害などの症状が、長引いたり新たに出現したりする。

 感染との因果関係の証明は難しい。臓器のダメージや体内に残るウイルスの影響などが原因ではないかと考えられている。

 学校に通えなくなったり、働けなくなったりするケースも少なくない。当事者らの団体が、経済的支援などを求める署名約4千筆を厚生労働省に提出している。

 まずは適切な医療を受けられる仕組みを整えなくてはならない。県は後遺症に対応する医療機関の一覧をホームページに載せている。後遺症に悩む人の手元に、確実に情報が届くよう工夫が要る。

 気がかりなのは、感染が子どもに及ぼす影響だ。コロナに感染し急性脳症を発症した子ども103人を分析したところ、亡くなったり重い後遺症があったりした例が27%を占めた。東京女子医大などのチームの研究による。

 死亡や重い後遺症の割合が、インフルエンザなど他のウイルス感染症に比べて多い。乳幼児だけでなく7~8歳での発症が多いのも特徴という。

 健康への影響については、長期にわたる追跡調査と研究が欠かせない。海外の研究と知見も集約する必要がある。政府は環境整備に力を注ぐべきだ。