台湾でカレー粉や菓子に使う香辛料に工業用染料「蘇丹紅」混入…商品回収、火鍋店では客減少も(2024年3月31日『読売新聞』)

 【台北=園田将嗣】台湾で中国から輸入された唐辛子粉などの香辛料に工業用染料「蘇丹紅」が混入していることが分かり、香辛料の輸入停止にとどまらず、関連商品も相次いで回収される騒ぎとなっている。健康被害は確認されていないが、台湾当局による検査の甘さが混入を招いたとの指摘が出ている。

 蘇丹紅は、靴磨きや床のつやを増すためなどに利用される。食品への使用は禁止されているが、色味を良くするために使ったとみられている。台湾メディアによると、人が長期摂取すると肝臓や腎臓を悪くしたり、アレルギー症状が出たりする。動物実験などでは発がん性が確認された。

「蘇丹紅」が混入した香辛料が菓子に使用されているかどうか確認する台湾南部・高雄市の職員ら(一部修整してあります)=同市のホームページから
「蘇丹紅」が混入した香辛料が菓子に使用されているかどうか確認する台湾南部・高雄市の職員ら(一部修整してあります)=同市のホームページから

 蘇丹紅が混ざった香辛料は、異なる業者が少なくとも2ルートで中国から輸入していた。高雄地検は3月、このうち1ルートについて、食品安全衛生管理法違反で男ら3人を拘束した。3人は中国に会社を設立し香辛料の原料を購入・加工後、複数の会社に販売するなどしたとみられる。別ルートも捜査が進む。

 蘇丹紅の混入は今年1月、消費者からの通報で発覚し、カレー粉や菓子などにも使われていることが判明した。ある総菜店は「当店の香辛料に蘇丹紅は使用していない」と、注意書きを掲示した。火鍋店の客が1~2割減ったとの報道もある。

 台湾当局は昨年12月以降、中国から輸入される全ての香辛料を対象に検査を実施し始めた。「蘇丹紅」を使った香辛料は検査を強化する前に輸入されたものだった。台湾誌「今周刊」によると、問題の香辛料を輸入した業者は過去にも、台湾当局の水際検査で混入が確認されたことがあったが、複数の業者を使い分け、輸入を継続していた疑いが浮上している。