小林製薬 紅麹問題「プベルル酸」健康被害の製品ロットで確認(2024年3月29日『NHKニュース』)

小林製薬」の「紅麹」の成分を含む健康食品を摂取した人が腎臓の病気などを発症した問題で、小林章浩社長は29日開いた会見で「深刻な社会問題を招いてしまい深くおわび申し上げます」と謝罪しました。去年製造した原料や製品に青カビから発生することがある「プベルル酸」という物質が含まれていた可能性が高いということで、今後、国の協力を受けながら詳しい原因を調査していくことにしています。

※記事では小林製薬の会見詳細のほか、「回収対象」となっている製品の一覧表をまとめています。

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「プベルル酸」とは

厚生労働省は、28日開いた専門家による調査会で小林製薬から説明を受けた内容を明らかにしました。それによりますと「プベルル酸」という青カビから発生することがある物質が健康被害の訴えがあった製品のロットで確認されたということです。

「プベルル酸」は、抗マラリアの作用が報告されているということですがどのくらい飲むと人体に影響があるのかや、腎臓に対する影響は現時点では明らかになっていないということです。また、今回確認されたプベルル酸が青カビからできたものかなど製品中に含まれた経路もわかっていないということです。

厚生労働省の担当者は「原因物質かどうかはわからない。あらゆる可能性を含め今後調べる」と述べました。厚生労働省は、国立医薬品食品衛生研究所で過去3年分のサンプルを分析し、「プベルル酸」の毒性について調べるほか、「プベルル酸」以外の物質が含まれていないかも含め原因物質の特定を進めることにしています。

=29日の動き=

30日に小林製薬の製造工場に立ち入り検査へ

武見厚生労働大臣は総理大臣官邸で記者団に「あす(30日)、小林製薬の製造工場に対し立ち入り検査を行うこととしている」と述べました。また、厚生労働省の大坪健康・生活衛生局長は「原料を製造している工場の検査を行うということで、大阪市と調整をしているところだ」と述べました。厚生労働省によりますと、立ち入り検査は食品衛生法に基づいて、30日は、閉鎖された大阪市内の工場で、31日は和歌山県内にある工場で行うということです。

17:30すぎ

関係閣僚会合を開催

政府はきょう総理大臣官邸で林官房長官や武見厚生労働大臣らが出席し、初めてとなる関係閣僚会合を開きました。この中で林官房長官は、関係閣僚に対しメーカーなどが行っている回収命令の対象以外の製品について自主点検の結果をもとに必要な措置を講じることや原因物質の特定や分析、それに、発生原因の究明に全力を挙げて取り組むよう求めました。また食品による健康被害などに関する情報収集体制の見直しや国の関与のあり方、それに今回の問題を受けた「機能性表示食品」の制度のあり方などについて、5月末をめどに考え方を取りまとめることも求めました。

死亡した5人のうち1人は茨城県

小林製薬」の「紅麹」の成分を含む健康食品を摂取した人が腎臓の病気などを発症した問題で、茨城県は県内で1人の死亡が確認されたと発表しました。会社が明らかにしている健康食品を摂取したあとに腎臓の病気を発症するなどして死亡した5人のうちの1人だということです。

愛媛 酒造会社 色の原料など問い合わせ増

酵母を使った桃色の日本酒を醸造する愛媛県西予市の酒造会社は、「小林製薬」の「紅麹」原料を使っていませんが「色の原料は何か」などの問い合わせが増え、対応に追われています。

西予市宇和町にある「宇都宮酒造」は、110年以上前から続く酒造会社で、4つの銘柄の日本酒を醸造し、愛媛県内の酒店や道の駅などで販売しています。このうち、着色料を使わず赤色酵母を使った桃色の日本酒について、小林製薬の「紅麹」の成分を含む健康食品の問題が明らかになったあと会社に消費者から「色の原料は何か」や「商品に問題はないのか」などの問い合わせが増え、対応に追われているということです。このため、会社ではSNSなどに紅麹を使った商品は扱っていないことや、すべての商品の安全性に問題がないことを伝える投稿をしました。酒造会社の山下英輔社長(39)は「誤った噂が流れることを心配しています。消費者の方には商品について正しく理解してもらいたいです」と話していました。

岡山 食品メーカー ソーセージ約1万袋自主回収

小林製薬から紅麹原料を仕入れ、ソーセージを製造・販売している岡山県早島町の食品メーカー「薫製倶楽部」は、小林製薬からの連絡を受け紅麹原料を使っていた2種類の製品を自主回収しています。回収の対象は「倉敷ソーセージ」と「金太郎ソーセージ」で、あわせておよそ1万袋に上るということです。これまでのところ健康被害などの連絡は入っていないということです。

これらの製品は会社の主力製品と位置づけられていて、会社では顧客などからの問い合わせの電話対応に追われていました。この会社では、うまみや香りを引き出すため、およそ10年前から紅麹を使用してソーセージを作っていて、4月からは新たに大口の受注も決まっていましたが、納入を延期することになり、自主回収による損失は数百万円に上るということです。食品メーカーの森雅昭社長は「お客様にご迷惑をおかけして大変申し訳ありません。ただ、紅麹そのものが悪いという訳ではない。手に入るかわからないが、別の紅麹を試して、商品を復活させたい」と話していました。

官房長官“再発防止へ施策の検討開始”

官房長官は29日午後の記者会見で「政府の取り組みや把握した情報についてWHO=世界保健機関への情報提供や在外公館を通じた外国政府への情報提供を実施しており、引き続き適時適切に海外にも発信していく」と述べました。その上で「健康被害の拡大や『小林製薬』が製造した紅麹原料の他社での使用の広がりが明らかになる中、関係閣僚で今後の対応方針を確認するとともに、再発防止に向けた施策の検討も開始する。引き続き関係省庁が一丸となって食の安全の確保に全力を尽くしたい」と述べました。

都内で健康被害の疑い 計25人

東京都の小池知事は29日の記者会見で「都内で健康被害を受けたと疑われる人については、あわせて25人把握している」と明らかにしました。都によりますと、大阪市から都に調査の依頼があった人が20人、直接、都の保健所に連絡をした人が5人で、29日の時点で重い症状を訴える人はいないということです。保健所が症状の内容や程度、対象の食品を食べた時期などについて調査を行っていて、都は速やかに調査結果を大阪市と共有することにしています。都は、回収の対象となった食品は食べずに返品するとともに、万が一、食べて体調が悪くなった場合は医療機関を受診し最寄りの保健所に連絡するよう呼びかけています。

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国が電話相談窓口を設置

厚生労働省消費者庁は紅麹を使用した製品に由来する健康被害について、国民や事業者からの問い合わせに応えるための電話相談窓口を合同で設置しました。

電話番号は03-3595-2760です。
午前9時から午後9時まで、土日や祝日も受け付けます。

大阪市が週明けにも対策本部を設置へ

対策本部では、国などとも連携しながら、健康被害の全体像の把握や、流通経路の特定、それに原因究明などに向けた取り組みについて、専門家の意見も交えて今後の対応を協議するということです。

横山市長は「影響はいまなお拡大し続けていて、関係機関と連携して情報共有などを行っていく必要があり、私自身が本部長となり、先頭に立って情報収集や対応を進めていきたい」と述べました。また横山市長は、大阪市食品衛生法に基づいて会社に回収を命じる行政処分を出した3種類の製品に関連して、製造先の工場がある岐阜県富山市に依頼した調査について「現時点で製造工場に異常があるという報告は受けていない」と述べました。そのうえで、大阪市内にある小林製薬の本社や、去年12月に閉鎖された工場への調査について「選択肢はすべて検討の“そ上”にあげる。必要であれば、立ち入りや現地調査を行う可能性はある」と述べました。

10:00すぎ

武見厚労相 “『紅麹コレステヘルプ』4350個が回収”

武見厚生労働大臣は、衆議院厚生労働委員会大阪市が回収命令の対象としている3つの製品の回収状況について「市によると28日午後4時時点で『紅麹コレステヘルプ』は4350個が回収され『ナイシヘルプ+コレステロール』と『ナットウキナーゼさらさら粒GOLD』についてはゼロだ」と述べました。

厚生労働省によりますと「紅麹コレステヘルプ」は、2021年から今月までおよそ100万個が販売されていて、回収率はおよそ0.4%だということです。

また、閣議のあと記者団に対し「ほかの省庁との共同作業を円滑に行うため、厚生労働省内に『省庁間連携室』を設けるとともに、タスクフォースを設置をした。さらに、国民や事業者からの問い合わせに対応するコールセンターを設置する準備を進めている」と明らかにしました。その上で「小林製薬から状況の説明を受け、国立医薬品食品衛生研究所の協力を得ながら、現在検証を行っているところで、早期の原因究明に取り組んでいく」と述べました。

9:30ごろ

坂本農水相「製品の迅速な回収に全力を」

坂本農林水産大臣は、29日の閣議の後の会見で「健康被害の拡大防止が最優先であり、小林製薬には製品の迅速な回収に全力を挙げてもらいたい」と述べ、回収命令の対象となった製品の迅速な回収を会社側に求めました。また、坂本大臣は「消費者の不安が広がっていることから正しい情報の提供に努める」と述べ、消費者の不安の解消に向けて正確な情報発信に取り組んでいく考えを示しました。

小林製薬 会見詳細》

14:00

小林製薬社長の会見始まる 

小林製薬小林章浩社長らによる記者会見が午後2時から大阪市内で始まりました。今回の問題で、死亡した事例が報告されてから会社が記者会見を開くのは初めてです。

会見冒頭 社長が陳謝

小林社長は会見の冒頭で「現在、当社が製造している紅麹を摂取したことによる腎疾患などの発生問題で多くの皆様にご心痛とご不安をおかけし社会問題にまで発展し深くおわび申し上げます」と述べました。

「言葉に尽くせない たいへんなご迷惑をおかけしています」

また小林社長は「国内外で製品をご使用のお客様、原料を使用して製造販売している皆様、それをお支えの皆様、弊社が問題を起こした紅麹に携わるすべての皆様、健康食品を製造・販売されている皆様、診療や治療にあたっている医療機関の皆様、相談に乗っていただいている官公庁、自治体の皆様、それぞれに対し言葉に尽くせない、たいへんなご迷惑をおかけしています。お亡くなりなったお客様にはご冥福をお祈りし、ご遺族に心からお悔やみ申し上げます」と述べました。

“公表が先週3月22日 厳しいご批判真摯に受け止め深く反省”

さらに「本件の公表が先週3月22日になってしまったことに、厳しいご批判を真摯に受け止めて深く反省しております。日々多くの問い合わせやお叱りの声をちょうだいしている。弊社は今後も入院治療中の方をはじめ、関係するお客さますべてに丁寧な対応を続けてまいります。加えて、事態の全容解明、これ以上の被害の拡大防止、丁寧な説明と補償を含めた真摯(しんし)な対応、品質管理体制、危機管理の改善に社をあげて、外部の専門家の知見に耳をかたむけながら全身全霊で取り組む」と述べました。

“深刻な社会問題を招いてしまったこと改めて深くおわび 

そして「現在も入院中、治療中の方が数多くいらっしゃる事も承知しており、一刻も早い回復をお祈りしております。このたびは国内外の大切なお客様やお取引先さまに多大なるご迷惑をおかけいたしました。加えて弊社を取り巻くすべての皆様に多大なる不安、恐れを与え、大変な思いをさせてしまったこと、深刻な社会問題を招いてしまったことにつきまして、改めて深くおわびを申し上げます」と述べました。

執行役員「亡くなった方は5人 入院されている方は114人」

渡邊淳執行役員は「3月28日午後10時の時点の集計で、亡くなった方は5人、入院されている方は114人となっています。多くの健康相談の電話があり、4月1日以降は、電話回線を280に増やして対応する」と述べました。

執行役員“今後国や研究機関からも力借り原因究明にあたる” 

また渡邊執行役員は「今後は政府や厚生労働省、研究機関からも全面的に力を借りて原因究明にあたっていく。自分たちの会社の力で早期にやるべきだったが、結果的にこのようになってしまい大変申し訳なく思っている。各機関の力を借りて、原因とともに被害を受けた患者や不安を感じている方に情報を提供することが大事だと思っている。入院患者の主治医からの情報や持病や年齢などを厚労省に情報提供しながら不安を持っている方々にしっかりと情報提供していきたい」と述べました。

社長“「公表早ければ防げたか」には、ことばもない”

小林社長は、最初の症例を把握してからどのような体制をとってきたのか問われたのに対し「『もう少し早く公表ができれば防げたか』ということであれば、批判に対しては、ことばもない。当初は、原因が何であるのか、そもそも紅麹が原因であるのか全く分からない状況で、原因物質の特定に、研究部門に急ぎ取り組んでもらっている」と述べました。

●経済部デスク解説 ● 

小林製薬東証プライムに上場していて、高い企業統治の体制を備えているとされている企業。会社には7人の取締役がいるが、そのうち4人は社外取締役で、中には著名な学者や経営者も含まれ、外部から経営をチェックする経営体制を整えている。さらに重大な問題が発生した場合などに対応する、リスク管理や内部統制の仕組みも備えているとしている。今回の問題にあたって、報告を受けた各組織や取締役会がどのように判断したのかが今後焦点になる。

食品カテゴリー長“カビから生成の可能性否定できない” 

ヘルスケア事業部の梶田恵介 食品カテゴリー長は、去年4月から12月にかけて製造した原料に含まれていた可能性があるとして分析を進めている、想定していなかった成分について「1週間で構造まで見えてきている。今後は国の研究機関とともに解明を進めていく形になる。現時点ではまだ明確には解明できていないので詳細は控えさせていただきたい。われわれが想定している化合物であるならカビから生成されたものである可能性は否定できない」と述べました。

食品カテゴリー長“構造体がだいぶ見えてきている”

梶田食品カテゴリー長は「今回の『想定していない成分』については構造体がだいぶ見えてきているが、国の研究機関と解明を進めていきたい。紅麹にはさまざまな成分が入っていて、その成分と、『想定していない成分』が何らかの相互作用で悪影響を及ぼした可能性も否定できない。厚生労働省と計画を立てて迅速に情報提供して解明を進めていく」と述べました。

執行役員“補償は誠意を尽くす”

渡邊執行役員は「お亡くなりになった方のうち、最初の方に情報を得られた3人のご遺族には連絡をしていて、このうち1人は、担当者が直接お会いしてお話を聞いている。医師の診察記録も含めて何が起きたのか情報を集めるとともに、補償については、誠心誠意、向き合って誠意を尽くすことをお伝えしている。また入院や治療を受けている方にも、費用を負担することはお伝えしている。現時点では、入院は114人、通院や通院希望の方はおよそ680人と把握している」と述べました。

執行役員“管理体制の検証進めている” 

山下健司執行役員は「工場の管理体制については問題発覚後、自社だけでなく、第三者有識者にも参加してもらい、漏れがなかったかどうか検証を進めている。検証結果を踏まえて国に情報提供し、ご判断をいただくことになる」と述べました。そして、外部からカビが混入した可能性について報道陣から問われたの対し、山下執行役員は「紅麹菌自体も菌なので可能性はゼロではないと感じている」と述べました。

執行役員“供給先などに配合量などの調査票 回答は国に報告”

渡邊執行役員は取引先からの報告について「現在のところ、健康被害についての報告はない」と述べました。その上で「小林製薬が直接、取り引きしている52社と、その先のメーカーなど供給先のおよそ170社に対して健康被害の有無と今回の紅麹原料の配合量などを聞く調査票を送っている。回答はすべて厚生労働省に報告することにしている」と述べました。

食品カテゴリー長“要請に応じ分析データなど情報を迅速に出す”

梶田食品カテゴリー長は「解明を進める国の研究機関というのは国立衛生研究所だと認識しているが、正式にどのように進めるかという報告は受けていない。国の機関に研究を進めていただきながら、われわれは、要請に応じてこれまでに得た分析データなどの情報を迅速に出していくという役割分担になると思う」と述べました。

社長“回収などの費用算出難しい”

小林社長は「前回の会見の時点では商品の回収などに18億円の費用がかかる見込みだったが、影響が当初の想定以上に広がっている。それ以上の費用がかかると思うが、今のところ具体的な金額を算出することは難しい状況だ」と述べました。

社長“台湾でも厚労省通じて回収呼びかけ”

小林社長は海外でも影響が出ていることについて「中国や台湾でも紅麹原料によりご迷惑をおかけして大変、申し訳ございません。台湾には、原料が届けられていると思うが販売の全容がつかめておらず厚生労働省を通じてメーカーに回収を呼びかけている」と述べました。

経営責任問われ“原因究明・再発防止がわれわれ全員の責任”

また社長は、経営責任について問われたのに対し「大きな問題を起こしており、まずは健康被害を訴えている方に情報を提供することや、速やかに診察・治療をしてもらうことが最優先で、必要に応じて補償を行っていくことも大事だと思っている。その先として、原因を究明し、再発防止を行っていくことがわれわれ全員の責任で、そのリーダーとして、現時点ではそれらをしっかり進めていきたい」と述べました。

  • 注目

死亡した5人は70代~90代を含む男女

渡邊執行役員は、健康食品を摂取したあとに腎臓の病気を発症するなどして死亡した5人について70代から90代の男女を含んでいることを明らかにしました。

想定していない成分は“既知の化合物と認識”

梶田恵介食品カテゴリー長は現在候補としてあがっているものに未知の物質はあるのかという質問に対し「既知の化合物と認識している。我々の研究ではそう判断している」と答えました。また、健康への影響については「直接腎臓への毒性があるものか、試験までたどり着いていないので国の研究機関と今後、解明していく」と述べました。

ヘルスケア事業の継続“今後も貢献していきたい”

小林社長は報道陣から健康食品を含むヘルスケア事業を継続するかどうかを問われたのに対し「国民の健康を考えると、病気の予防や健康の維持は非常に重要なポイントだ。許されるのであればその分野で今後も貢献していきたい」と述べました。

大阪の工場閉鎖“建物自体も老朽化”

山下執行役員は、去年12月まで紅麹原料を製造していた大阪市の工場を閉鎖した理由について「大阪工場は敷地が非常に狭く、建物自体も老朽化した工場だった。より効率的な生産を目指して、大阪工場の生産機能の停止を決定し、和歌山の工場に移動した」と述べました。

紅麹含む健康食品など扱う企業数“全容解明には至っていない”

小林社長は「紅麹」を含む健康食品などを扱う企業の数について「直接取り引きしているのが52社、それを含めて原料を使用している企業が173社あり、全容の解明には至っていない。扱っている企業はほかにもあると思っている」と述べました。

  • 注目

食品カテゴリー長“プベルル酸は意図しない成分候補の1つ”

厚生労働省は会社側の調査で一部の製品のロットから青カビから発生することがある「プベルル酸」という物質が確認されたと明らかにしました。これについて梶田食品カテゴリー長は「意図しない成分の候補の1つとして、会社の調査でわかったため情報提供させていただいた。現時点では、文献調査などが追いついておらず、人体への影響とはひもづけられていない」と述べました。また、会社側の会見で質問が出ていながら、厚生労働省が発表するまで公表を差し控えていたことについては「発表があることを事前に把握しておらず、準備ができていなかった」と説明しました。

食品カテゴリー長“混入経路は調査中”

梶田食品カテゴリー長は「『プベルル酸』の可能性にいきついたのは今月25日の夜だ。翌日・26日に研究関係者と話したところ、『プベルル酸』の可能性が高いということになった。混入経路については現時点ではさまざまな可能性があり、調査中だ」と述べました。

執行役員“工場の製造ラインで混入の可能性の有無 総点検中”

山下執行役員は「『プベルル酸』は青カビから生成される可能性があると認識している。和歌山県の工場の製造ラインでカビが生えるところがないか、混入する可能性があるところがないか、総点検している」と述べました。

小林社長“進退は今のところ考えていない”

小林社長は、報道陣から自身の進退について問われたのに対し「今のところ考えていない。取り組まなければならないことに集中する」と述べました。

  • NEW

食品カテゴリー長“「プベルル酸」以外にも2つほど候補”

梶田食品カテゴリー長は、去年、製造した原料などに含まれていた想定していない成分について、「青カビから発生することがある『プベルル酸』以外にも2つほど候補がある」と明らかにしました。一方、具体的な名前については「その物質を取り扱う際の印象が変わりかねないので差し控える」と述べました。また、小林製薬は紅麹の製造過程で作られることがあるという報告のある「シトリニン」という毒素についてこれまでの調査で検出されなかったとしていて、ほかにもカビが作る毒素として「アフラトキシン」、「オクラトキシン」、「ゼアラレノン」、それに「デオキシニバレノール」の4種類について調べ、いずれも検出されなかったと説明しました。

18:30すぎ

会見終了

小林製薬の小林社長らによる記者会見は、およそ4時間半にわたって行われ午後6時半ごろに終了しました。

海外でも影響

●中国では、製品の一部がインターネット通販を通じて販売されていたことから小林製薬は販売を停止し、摂取を中止するよう呼びかけるとともに自主回収を行うと発表しています。サプリメントや衛生用品など小林製薬の製品は中国でもよく知られ、国営メディアも、今回の問題を繰り返し伝えているほか、SNS上でも高い関心を集めています。

●台湾では、南部の高雄に住む(たかお)70代の女性が、台湾のメーカーが小林製薬の紅麹原料を使って製造したサプリメントを3、4年前から摂取し、去年3月に急性腎不全と診断されたと地元メディアが伝えました。現地の衛生当局は、このサプリメントが病気につながったかどうかはまだ分かっていないとしています。衛生当局によりますと、小林製薬の紅麹原料が域内に輸入された記録が見つかったということで、現地の30を超える業者がこれらを使った製品の自主回収などの対応に追われています。

●香港では、小林製薬は関連製品を販売していないとした上で、日本で購入された製品の回収には応じるとしています。

ベトナムでは、保健省が政府の公式サイトを通じて使用しないよう警告しています。対象の製品については、行政手続きを経た上で各種証明書が発行されていないため、ベトナム国内で正規に流通していないとしていますが、見つけた場合は当局に通報するよう呼びかけています。

●韓国では、食品医薬品安全庁によりますと、大阪市食品衛生法に基づき回収を命じた小林製薬の「紅麹コレステヘルプ」など3つの製品について、輸入は確認されていないほか、健康被害に関する報告もこれまでのところ入っていないということです。食品医薬品安全庁は、ネット通販を行っているポータルサイトなどに対し、消費者が誤って購入しないよう製品に関する情報を公表するとともに販売しないよう呼びかけています。

小林製薬の「紅麹」問題 これまでの概要

小林製薬の「紅麹」の成分が含まれた健康食品をめぐっては、摂取したあとに腎臓の病気を発症するなどして29日午前時点で5人が死亡、のべ93人が入院したことがわかっています。
●最初の死亡事例が公表されたのは今月26日で、亡くなった人は「紅麹コレステヘルプ」を2021年4月からおよそ3年間購入していました。会社や国によりますと、急性腎不全でことし亡くなったということです。あとの4人については、遺族から会社に対し亡くなる前に「紅麹コレステヘルプ」を摂取していたと連絡があり、いずれも腎臓の病気が疑われる報告があったということです。摂取の時期や詳しい病状は分かっていないケースもあり、会社は「原因となった疑いがある」として調査を進めています。
●また厚生労働省への会社の報告によりますと27日までの時点で入院した人はのべ93人、医療機関を受診した人はのべ379人、会社が受けた相談件数はおよそ1万2000件となっています。
●「紅麹コレステヘルプ」など3種類の製品については大阪市が有害な物質が含まれている疑いがあるとして、食品衛生法に基づき、回収を命じる行政処分を出しています。
小林製薬によりますと、これまでに、腎臓の病気を発症した人が摂取した「紅麹コレステヘルプ」の製造時期を調査する中で、想定していない成分が去年4月から12月にかけて製造した紅麹の原料に含まれている可能性があることが分かっているということです。この成分はカビから作られるものに似ているということで、会社は成分の分析を急ぐとともに、発生したいきさつや人体への影響などを調べることにしています。

=これまでの経緯 時系列= 

=紅麹とは?機能性表示食品とは?=

紅麹とは 

「紅麹」は米などの穀類に紅麹菌を繁殖させてつくられたもので、古くから食品の着色料などとして使われてきました。

紅麹の「ロバスタチン」という成分にはコレステロールを低下させる作用があるとされ、紅麹由来の健康食品などが多く販売されています。

一方、紅麹菌の中には「シトリニン」というカビ毒をつくるものもあり、腎臓の病気を引き起こすおそれがあるとされています。

国の食品安全委員会によりますと、ヨーロッパでは紅麹由来の健康食品による健康被害が報告されていて、EUヨーロッパ連合は健康食品に含まれる「シトリニン」の基準値を設定しているということです。

小林製薬によりますと、今回の報告を受けて成分を分析したところ、「シトリニン」は検出されなかったということです。

一方で「シトリニン」とは別の未知の成分の存在を示す分析結果が得られたということで「意図しない成分が含まれている可能性が判明した」としています。

内科専門医「紅麹そのものが悪者というわけでは決してない」

「紅麹」について、名古屋大学特任教授で総合内科専門医の柴田玲医師は「紅麹は紅麹菌というカビの一種で米など穀物類を発酵させてつくられ、中国や台湾などでは薬膳や漢方薬として使用している。また、医薬品としてコレステロールを下げるために使う薬の成分と同じ成分が紅麹の中には含まれている。健康食品として使っているのに加えて、例えば着色料などたくさんの分野で出荷されている」と話しています。

もしも、対象となった商品を口にした場合はどうすればいいのかについては「まずはおしっこの出が悪くなったとか、すごく手足がむくむなとか、そういった症状があれば医療機関に相談してほしい」と話しています。

一方で消費者には冷静な対応を呼びかけていて、柴田医師は「紅麹そのものが悪者というわけでは決してない。該当する食品や製品とは別の物で紅麹を摂取している方が極端に不安に思う必要はないので、このあたりは十分理解して欲しいと思う」と話しています。

「機能性表示食品」とは 

「機能性表示食品」は、パッケージに、健康の維持や増進に役立つという食品の機能を表示したものです。

販売前に、事業者が食品の安全性や機能性の科学的な根拠などを、国が定めるルールにのっとり消費者庁に届け出て公表する必要がありますが、許可制ではなく、国の審査も行われないため、事業者の責任で適正に販売することになっています。

効果や安全性を国が審査する「特定保健用食品」や、すでに科学的な根拠が確認された栄養成分を一定の基準量を含めば国が定めた表現によって機能性を表示できる「栄養機能食品」とは異なる制度となってます。

=「回収命令」を受けた小林製薬の3製品= 

大阪市は、有害な物質が含まれている疑いがあるとして27日に「紅麹」の成分を含む「紅麹コレステヘルプ」「ナットウキナーゼさらさら粒GOLD」「ナイシヘルプ+コレステロール」の3種類の製品について、食品衛生法に基づき、回収を命じる行政処分を出しました。

回収の対象となるのは、あわせておよそ100万個で、市は回収が完了した時点で改めて製品の廃棄命令を出す方針です。

これ以外にも、全国では紅麹原料を使った製品を自主回収する動きが相次いでいます。

これらの製品による健康被害は今のところ確認されていません

厚生労働省は、小林製薬が製造した紅麹原料を使った製品のうち、事業者が届け出た自主回収の対象となっている製品の情報をまとめてホームページで公表しています。

厚生労働省は、食品衛生法違反のおそれがあるとして、自主回収となった食品について新たな健康被害の発生を防ぐため事業者に対し「食品衛生申請等システム」での報告を義務づけて公表しています。

厚生労働省によりますと、今回の問題を受けて、小林製薬の紅麹原料を使った製品を、各社が自主回収する動きが相次いでいて、28日午前10時半の時点で、54件の自主回収の届け出があったということです。

各社が届け出た情報によりますとこれらの製品では、今のところ健康被害は確認されていないということです。

厚生労働省は、これらの製品が手元にある場合は購入した店舗やメーカーに連絡するほか、ホームペ-ジのリストに掲載された保健所でも、体調不良などについての相談を受け付けているということです。