増える外国人住民 日本語学べる場広げたい(2024年3月30日『山陽新聞』-「社説」


 出入国在留管理庁によると、昨年末時点の在留外国人数は過去最多の341万992人だった。岡山県も最多の3万5928人で、ここ10年で約1万5千人増えている。

 在留資格別では技能実習が9641人で最も多い。人手不足に悩む企業の受け入れ拡大が増加の背景にあろう。

 職場や地域での孤立、意思疎通の不足によるトラブルを防ぐには、一定の日本語能力が欠かせない。受け入れ企業や監理団体の支援が重要なのは言うまでもないが、2019年に施行された日本語教育推進法は外国人への日本語教育を国や自治体の責務としている。日本語を学べる場を広げなければならない。

 岡山市は先日、同市南区の福浜公民館で日本語教室の「プレ教室」を開いた。ベトナムインドネシアカンボジアなどからの実習生、留学生9人が「ありがとう」「またね」といったあいさつを覚えるゲームなどをしながら、地域の住民や高校生ら約30人と交流した=写真。

 同庁の調査では、日本語能力が高い外国人ほど、生活環境の満足度は高い。教室に参加した留学生によると、日本語を学びたい外国人は多いものの、「参加しやすい時間や場所かが問題」という。

 同公民館で開いたのは、市内には11の日本語教室があるが、南区は実習生が多く暮らしているのに、残留孤児ら中国帰国者向けを除き教室がないためだ。本格的には6月から月3回、日曜日に開く。

 市はこうした「空白地域」での教室の実施など日本語教育の基本方針を今春まとめた。東区瀬戸町万富地区でも住民との交流を通した学習の場を月1回程度設ける。学びとともにコミュニケーションを深めることは大切だろう。

 岡山県によると、県内では16市町で39教室(昨年6月時点)が開設されている一方、11市町村は空白地域である。県は24年度から空白の解消に向け、モデル教室を開設するとともに、運営側へのサポートを強化するという。

 最大の課題は教える側の人材確保だ。教室の講師の多くはボランティアで、担い手の高齢化や不足が深刻化している。より専門的な知識がある日本語教師は大学や日本語学校が多く仕事を掛け持ちしやすい都市部に集中している。

 オンライン授業を活用するなど学びの場を確保する工夫が必要である。国も自治体を支援し、教える人の待遇改善に努めるべきだ。