子離れの時節(2024年3月28日『』-「あぶくま抄」)

 今春、親元を離れた新世代の皆さんは、新天地に居を置き、進学や就職の準備も終えたころか。何かと世話を焼きたくなるのが親心。新居探しや引っ越しを手伝った方もおられよう

▼「一人で生活できるかどうか…」。いわき市の50代男性は気をもむ。一人娘が都内の大学に進む。18年間、愛情を注いできたつもりだ。幼いころはちょっとした風邪でも医者に連れ、雨が降れば学校へ送った。将来の目標を語る姿に今、成長を感じる。半面、手の届かない所に行ってしまうようでなんだか寂しい

▼♪そっちの暮らしは辛[つら]くないか? 飯はちゃんと食ってるか? まだまだ帰ってきたくはないか?―。ケツメイシの「親父[おやじ]のメール」の一節だ。離れて暮らす子を案じる気持ちを歌う。不慣れなスマホの画面に指を動かし、絵文字交じりの文章を作る。けなげな姿が浮かぶ

▼心配性な親を煩わしいと感じるのは、自立心の芽生えでもある。それでも、おせっかいながら娘さん、心細くなったら古里の家族を頼ってみて。メールでも電話でも「何とかやってるよ」「そのうち帰るから」。このお父さんには、わが身も含めてひと言。親離れも成長の証し。そろそろ子離れの時節かもです。