丸岡城サミット 児童生徒の提案を大切に(2024年3月28日『福井新聞』-「論説」)

丸岡城がきれいすぎて、結婚したいんです」。そんな愛があふれる発表が相次いだ。

 坂井市丸岡町内の児童、生徒たちが、城や周辺地域の魅力、城を中心としたまちづくりについて1年かけて調査研究。成果披露の場として、同市内で18日に開かれた丸岡城サミットでは、単なる「好き」にとどまらず、地域を大切に思う心を「未来へつなぐ」といったメッセージを発信。その真剣な思いに、気付きを与えられた大人たちは少なくないだろう。

 サミットは今年で5回目。初めて丸岡町内すべての小中高校9校が参加した。

 寸劇やクイズ、歌、演奏、プレゼンテーション形式と表現は多彩。2時間半はあっという間だった。

 「私たちが丸岡城を守っていきたい」。過去、未来にタイムスリップする創作劇で高椋小3年はストレートな思いを強調した。丸岡中2年は、衝突し合っていたお年寄りと若者が、地元の良さを再認識する物語をユーモアを交えて演じた。さらに親から子へ、丸岡愛が受け継がれていく姿と、自分たちがそれを担う決意を示した。

 丸岡城はなぜ今の場所に? 磯部小5年の異色の考察は大人たちをうならせた。加賀からの攻めに対抗するために、と挙げた候補地は四つ。その中から小高い丘にあり、大量の兵を動かせる広い平野があることなどから現在地が適地だと導いた。「お城はいつもよく見ているけど、工夫されていることが分かった」。当時の武将になりきってその知恵に迫るという視点は面白かった。

 城のお膝元、平章小5年は周辺マップ付きパンフレット、歴史を伝える紙芝居作りを実践。活動を通して「自分たちで考え、行動できるようになった」と成長を自覚する。長畝小3年は、新たな魅力づくりにとキャラクター・グッズ作りなどを提案した。明章小4年、鳴鹿小3年はそれぞれの地域の宝をアピール。城クイズで丸岡高地域協働部は会場を盛り上げた。

 はっとさせられたのは大人への提言だ。

 「地域の人に愛着と誇りを持ってほしい」「活性化のために歴史、魅力を知り発信していくことが必要」。丸岡南中1年は、食文化や体験催しで誘客する県内各地の事例に学び、城のぼんぼり作り体験、合戦劇、大茶会開催などを提案。発表だけに終わらせるのではなく、地域の人々と一緒に実現していきたい―。そんな呼びかけに聞こえた。

 丸岡城を核に地域がつながり、学びを深めた児童生徒たち。その純粋な思いを、地域の大人たちはどう感じただろうか。