共産党の小池晃書記局長は15日の参院予算委員会で、経団連の十倉会長が選択的夫婦別姓制度に賛意を示した「政府は一丁目一番地としてやってほしい」という発言に言及した。本来対立する立場の意見が太陽と月のように重なったとして、反対しているのは自民党の一部議員のみであることを際立たせた。
同制度は1996年、法相の諮問機関「法制審議会」が導入を提言する改正法案要綱を答申。「家族の絆が壊れる」という自民党保守派の反対で、国会に上程されないまま30年近くの年月が流れた。
政治が女性の声に耳を傾けなかった結果といえる。スイスのシンクタンク「世界経済フォーラム」が昨年公表した男女格差報告で、日本は146カ国中125位と過去最低。分野別にみると「教育」「健康」がトップクラスなのに、「政治」「経済」が足を引っ張っている。特に国会議員や閣僚の男女比など「政治」の評点は最底辺に近い。学校の成績表なら、まずは深刻度の高い分野から改善するのが通常の対応だろう。
ただ、格差解消への動きは鈍い。政治のこうした状況を受け、選択的夫婦別姓の問題についても一部反対議員の声でむしろ後退していった。2020年に閣議決定した第5次男女共同参画基本計画では、4次計画まで検討施策の一つとして記されていた「選択的夫婦別姓(別氏)制度の導入」の文言が削除された。日本が別姓を選べない唯一の国として取り残され、国連女性差別撤廃委員会から何度勧告を受けても無視し続けた。
代わりに推進したのが、旧姓を通称使用する日本独自の政策。グローバル経済の中、二つの名前を使い分けるローカルルールとして混乱のもとになっている。
経団連の多様性(ダイバーシティ)に関する会議では、女性役員から「海外のホテルで、現地スタッフが手配した予約名とパスポートの名前と異なり宿泊を断られた」「海外の施設入場時、公的IDの名前と名簿の名前が異なりゲートを通れない」など弊害の報告が相次いだという。
事務局を務める大山みこさんは「旧姓の通称使用だけでは解決できない問題があり、女性活躍推進の阻害要因となっているとの認識が高まった」と話す。経済界では、多様性や公平性なども含めて課題に対応する「DE&I」の考え方が広がっている。「個人的な問題と位置づけられがちだった別姓の問題も、公平性の観点を含め『選択肢のある社会』の実現が必要」と言い、経団連として今後、政府に制度導入を正式に提言する予定だ。
政治は誰のためのものか。自民党は変わらないのか。政権を揺るがす裏金問題と同じ疑問を感じる。(経済部)
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