派閥幹部の再聴取 責任の取り方を自ら示せ(2024年3月27日『産経新聞』-「主張」)

 
衆院本会議で答弁する岸田文雄首相=26日午後、国会・衆院本会議場(春名中撮影)

 自民党の派閥パーティー収入不記載事件をめぐり、党内処分の調整が大詰めを迎えている。岸田文雄首相(党総裁)は26日、安倍派幹部に対し再聴取を始めた。

 処分対象の一人とされる二階俊博元幹事長は25日、次期衆院選に出馬しない意向を示した。

 二階派の元会計責任者と二階氏の秘書は立件されている。二階氏は記者会見で「政治責任は全て監督責任者である私自身にある」と述べた。

 安倍派幹部も処分を待たずに、政治責任をどのように取るのかを表明すべきではないのか。還流資金を政治資金収支報告書に記載しない慣行を続け、やめられなかった責任はある。すでに閣僚や党の役職を辞任しているが、これではけじめをつけたとはいえない。

 安倍派は令和4年4月の同派幹部会合で、会長だった安倍晋三元首相の意向を踏まえて還流をやめることを決めたが、派内から反発が起きたため、安倍氏の死後に復活させた。

 国会の政治倫理審査会(政倫審)で同派幹部は不記載を知らなかったと弁明し、還流復活の経緯についても「分からない」と語るなど、詳細は明らかにならなかった。一連の釈明には違和感を覚えるが、監督責任結果責任は大きい。

 二階氏は不出馬を表明したからといって、責任を免れるわけではない。党の処分は必要である。政倫審には二階派事務総長の武田良太総務相が弁明に立ったが、二階氏は出席していない。不出馬を表明した記者会見でも具体的に語ることはなかった。説明を果たすべきだ。

 自民は安倍派の残る幹部への再聴取を済ませたうえで、党紀委員会で処分を決める見通しである。

 参院予算委員会で首相は岸田派について「派閥全体での還付の不記載とは次元が違う」と語ったが、元会計責任者が立件されており、小さな問題とはいえない。岸田派会長を務めてきた首相に対しおとがめなしでは筋が通らない。首相の処分も欠かせないが、責任の取り方を自ら示してもらいたい。

 そもそも自民は処分を決定するまでに時間がかかりすぎだ。東京地検特捜部による捜査が終結したのは1月である。党としてのけじめと再発防止に向けた取り組みが急がれる。