平和学習の成果を劇で(2024年3月26日『宮崎日日新聞』-「くろしお」)

 長年、出身地の鹿児島県で中学校の社会科教師を務めた山元研二さん(現北海道教育大准教授)という男性がいる。当時の授業などを基に、一昨年「『特攻』を子どもにどう教えるか」という本を出版した。

 前書きに山元さんはこう記す。「原爆や沖縄戦が住民の直接体験によって語り伝えられるのに対し、特攻は住民が直接体験したわけではない」。その上で「元特攻兵士たちも、とうに90歳を超え生存者は激減している」と。風化への危機感が伝わってくる一節だ。

 国内のどこであれ、それぞれの地の「戦争の記憶」をどう伝え続けるかは大きな課題だ。地域にかつて特攻基地があった宮崎市の赤江小では先日、6年生による戦争をテーマにした劇が上演された。1年を通して積み重ねてきた「平和学習」の集大成としての発表の場だ。

 学習は座学だけではない。校区内の戦争関連施設を見学したり体験談の聞き取りを行ったりした。特攻隊員にとって、今の児童はひ孫の世代。それだけの年月に隔てられた生徒らが劇の上演だけでなくその準備を通し、遠い昔の出来事だが二度と起きない保証もない戦争を追体験する意義は大きい。

 学校における戦争関連の行事では、延岡中が空襲で犠牲になった栗田彰子教諭の慰霊祭を毎年実施。劇は、都農小や高鍋西中なども昨年行った。先の大戦が忘却の彼方(かなた)へと追いやられないためにも、今後こうした取り組みの連携が図れたらいいと考えている。