1冊、約3万8000円――。学校生活の思い出が詰まった卒業アルバムは今、家計の重い負担となっている。時代の変化を踏まえた、卒業アルバムの在り方とは。
カラー増、DVD付き
卒業アルバムの値段について、統計的なデータはないが、国際NGO「セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン」の調査では、2023年の卒業アルバムの平均額は小学校で1万1179円、中学校は1万1227円だった。
教材や教具、学校の財務などについて研究している千葉工業大の福嶋尚子准教授(教育行政学)は「私の周囲の人も、アルバムの値段は1万~2万円前後と言っています。みんなが高い値段を支払っていることを知り、かなり驚きました」と話す。
少子化で子どもの数が減れば、卒業アルバム1冊あたりの単価は上がる。紙や印刷代など物価高騰の影響を受けるし、カラーページの増加やDVD付きなど豪華なアルバムも高額化の要因となっているようだ。
卒業アルバムを購入するのは慣習として根付いている。家計への負担は決して軽くないが、「思い出の品だし、お祝いの気持ちも込めて、購入せざるを得ないという親心もあるでしょう」。
自治体が費用補助
千葉県長生村は24年度から、公立小中学校の卒業生1人につき、卒業アルバム代として1万円を補助する。新年度当初予算案に194万円を計上した。
村の小学校は3校、中学校は1校だ。生徒数が少ない学校では、単価が上がる傾向があり、今年度の卒業生が18人だった一松小学校の卒業アルバム1冊は、約3万8000円だった。八積小は約1万7000円、高根小は約1万5000円、長生中は約1万円だった。
大半の家庭は購入しているが、「厳しい値段だ」という声が村に寄せられており、村の担当者は補助の導入について、「購入を断念する家庭が出てしまっては、しのびないと考えました」と話す。
卒業アルバムに掲載する写真で、平等に生徒が写っているかを確認するのは教員だ。福嶋さんは「時間的にも労力的にも教員の負担が大きいことに対して、教育効果がどれくらいあるのか、改めて考えてみる必要があると思います」と指摘する。
また、印刷物にこだわる必要はないとし、「コンパクトで簡易的なものでも、十分思い出に残る卒業アルバムは作製できると思います。目的を再確認して、慣習を見直す必要があると思います」【大沢瑞季】