真庭の校歌収集 廃校後も共有し「財産」に(2024年3月17日『山陽新聞』-「社説」)

 少子化に伴う学校の統廃合が進んでいる。岡山県内の小中学校は本年度538校で、この10年間で50校余り減った。この春も総社市美咲町の6校が新しい学校に移行して廃止となる。

 廃校を含む真庭市内の小中学校の校歌について、市立図書館が地域おこし協力隊との協働事業として情報を収集、整理、発信している。「真庭校歌研究室」と名付けた活動はユニークだ。

 市民に情報提供を呼びかけ、学校の思い出などを聞き取るとともに校歌を歌ってもらう。それを記録し、許諾を得て動画投稿サイト・ユーチューブの市立図書館公式チャンネルで公開している。

 33校目となる有隣中学校の校歌が先日、収録された。1949年開校し、70年に落合中学校に統合され閉校となった学校である。跡地のグラウンドに、約30人のかつての生徒と教員が集まり、歌詞の掲示を見ながら歌った=写真。

 作曲者でもあり、卒業し60年余になる山本和子さん=同市=と日笠伸子さん=津山市=は「こうした機会があり感無量。高台にあった赤い屋根の校舎の記憶がよみがえった」と語り、同窓生との思い出話は盛り上がった。取り組みは住民を元気づけることにつながっていると言える。

 「流れてつきぬ旭川」「若き希望の火と燃えて」という歌詞には地域の誇りや生徒への願いが込められている。一方、戦前の価値観を映した歌詞が戦後、変更された学校もあるという。地域の歴史を市民が知る一助にもなろう。

 現在の学校制度になった47年以降、真庭市で閉校や休校になったのは、分校を含め49校。活動を始めて半年余で、現存する学校と合わせ半数近い校歌を収集した。

 「校歌は地域の大事な記憶だと改めて感じた。記録するのは社会教育の拠点としての務め」と西川正・市立中央図書館長は言う。校歌についてのイベントも今月開き、閉校した学校の卒業生が思い出を語ったり、校歌を歌ったりする取り組みも生まれている。

 岡山県立図書館(岡山市)も電子図書館「デジタル岡山大百科」の中で校歌の登録を進めている。2008年以降、県内の小中高校など109校の校歌の音声や歌詞を登録しており、図書館のホームページから視聴できる。

 校歌はそれぞれの地域や学校の「財産」でもあろう。廃校になっても共有し、地域の活性化に生かしてほしい。