戦闘機輸出の自公合意 これで歯止めといえるのか(2024年3月21日『中国新聞』-「社説」)

 国の安全保障政策の重大な転換にもかかわらず、性急過ぎるのではないか。日本が英国、イタリアと共同開発する次期戦闘機の第三国輸出の解禁に自民、公明の両党が合意した。政府は26日に閣議決定し、防衛装備移転三原則の運用指針を改定する方針だ。

 昨年12月、外国企業のライセンス(許可)に基づいて生産した完成品についてライセンス元への輸出を解禁し、殺傷能力のある武器輸出に道を開いた。それに続く政策転換となる。政府には国民に開かれた場で説明する責任がある。国会で議論を尽くすべきだ。

 共同開発は2022年12月に合意した。35年までの完了と配備開始を目指している。

 自民党は次期戦闘機を含め幅広く国際共同開発品を輸出できるよう見直す方針だったが、公明党は慎重だった。自民党内では一時、連立解消を求める声も出たという。岸田文雄首相は今月の参院予算委員会公明党幹部の質問に答え、第三国輸出を巡る歯止め策を次々と表明。公明の要求を丸のみした形になった。

 ただ、その歯止め策は心もとない。今回は対象を次期戦闘機だけとし、輸出先は「防衛装備品・技術移転協定」を結ぶ国に限った上で、輸出する場合は個別に閣議で決めるという。与党の閉ざされた協議だけで、行き過ぎた事態を防げるのだろうか。

 事前の詰めも甘かった。共同開発を決めた時は第三国輸出を想定せず、後に日本に求められていることが分かったという。言葉通りなら政府の失態だ。そもそも事実だろうか。意図的に隠したなら、国民への裏切り行為だ。

 輸出の理由を「生産規模が大きくなるほど価格が下がる」とした点も気になる。コスト削減のため方針を変更しては、禍根を残さないか。

 平和憲法の下、日本は武器を輸出しない政策を採ってきた。1967年に掲げた武器輸出三原則を、第2次安倍政権が防衛装備移転三原則と言い換えて政策を転換したが、輸出・提供先は安保上の協力国とし、殺傷能力のある武器は認めなかった。

 武器の輸出を急ぐ背景には中国の軍備増強がある。周辺国への供与で抑止力が高まるとの考えだ。岸田政権は22年末に「三原則の見直し検討」を打ち出した。

 9、10日に共同通信が実施した世論調査では、次期戦闘機の第三国輸出は「同盟国や友好国などに限定して認めるべきだ」が48・1%を占め、「一切認めるべきではない」の44・7%をやや上回った。中国の動きが東・南シナ海で活発化したためだろう。

 しかし、人を殺す武器を売る国になることが、憲法の理念に反するのは間違いない。戦闘機という殺傷能力の極めて高い武器で認めてしまえば、輸出対象がなし崩し的に広がる懸念もある。平和国家として外交・安保政策上、本当に必要なのか、今こそ幅広く議論しなければならない。