自民党の下村博文元文部科学相は18日、安倍派(清和政策研究会)の政治資金問題を巡り衆院政治倫理審査会に出席した。同派パーティー収入の還流が2022年に復活した経緯について「誰がどう決めたのか全く承知していない」と自身の関与を否定した。
下村氏は18年1月から19年9月まで安倍派の事務総長だった。衆参両院の政倫審に計6人の同派幹部が出席したが「裏金」づくりの真相は見えないままだ。
審査会の冒頭で下村氏は「国民に多大なる不信と疑念を抱かせ心より謝罪する」と陳謝した。「安倍派の会計には全く関与していなかった」と話した。
協議で安倍氏の指示に反して還流の再開が決まったのではないかとの見方があった。下村氏は結論は出なかったとの認識を示し「安倍氏が亡くなった後の派閥の会長と運営、安倍氏の葬儀への対応が中心だった」と説明した。
還流復活の経緯に関し「長年の慣行のなかで事務局長が判断したのか、少なくとも私は全く関わっていない」と言明した。
還流の代替策として議員個人の政治資金パーティー券を派閥が購入する案が出たとも紹介。「誰が最初に言ったか覚えていない」と発言者は明かさなかった。
先に政倫審に出席した西村、世耕の2氏も復活を決めた事実はなかったと証言している。塩谷氏は「政治活動のために継続していくしかないかなというような状況で終わった」と答えていた。
下村氏は過去に会長を務めた森喜朗元首相の関与を問われても明確な答弁を避けた。「少なくとも18年までは還付(還流)そのものを受けていない。確定的にいつからかは私自身はわからない」と述べるにとどめた。
塩谷氏は還流が始まった時期を「二十数年前から始まったのではないか」と認識していた。塩谷氏の指摘通りなら森氏が断続的に派閥会長を担った1998〜2006年と重なる。
下村氏は安倍派幹部らに「違法性」の認識はなかったと主張した。下村氏によると、22年4月に安倍氏が還流を廃止しようとした際、還流分の資金報告書不記載や違法性の話はなかったという。下村氏が不記載について認識したのは23年末と明かした。
安倍派幹部の政倫審出席は下村氏で一巡した。一連の審議で実態が明らかになったとは言いがたい。証人喚問と異なり虚偽の説明をしても偽証罪に問われない政倫審の限界が露呈した。
岸田文雄首相は衆参両院の政倫審での弁明を踏まえて処分を判断する方針を示す。党内には安倍派に影響力を行使してきた森氏に直接聴取するよう求める声もある。