「名に立ちゅる沖縄宝島でむぬ…(2024年3月21日『』-「余録」)

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3月22~24日にソウルで開催される「現代日本戯曲朗読公演」のポスター
3月22~24日にソウルで開催される「現代日本戯曲朗読公演」のポスター
ひめゆりピースホールのある那覇の栄町市場に張られた「カタブイ、1972」のポスター
ひめゆりピースホールのある那覇の栄町市場に張られた「カタブイ、1972」のポスター
沖縄返還50年の節目に上演された舞台「カタブイ、1972」の一場面=坂内太撮影
沖縄返還50年の節目に上演された舞台「カタブイ、1972」の一場面=坂内太撮影

 「名(なー)に立ちゅる沖縄(うちなー)宝島でむぬ/心(くくる)うち合わち/うたちみしょーり(名高い沖縄は宝島だから、心を一つに合わせて立ちましょう)」。こう歌う「ヒヤミカチ節」は戦後、激しい地上戦で荒廃した沖縄の人々を励まそうと琉歌を基に生まれた民謡だ

三線(さんしん)の速弾きで聴かせる曲はノリがいい。サビの「ヒヤミカチ起(う)きり」とは、「エイ、と言って起き上がる」という意味だ。何度転んでもあきらめない。不屈の精神が込められている

高校野球の沖縄代表校の応援歌でも知られ、2019年の首里城火災では復興を願って歌われた。今月、那覇と東京で上演された内藤裕子さん作・演出の舞台「カタブイ、1995」でも強い印象を残した。沖縄の三つの転換点を、家族を通して描く3部作の第2弾だ

▲その1作目で、沖縄返還を軸にした「カタブイ、1972」でも歌われた。あすからソウルで開催される「現代日本戯曲朗読公演」で、韓国の演出家と俳優により上演される。02年から続く、芸術による貴重な草の根交流の場だ

▲沖縄では戦争に続く米軍統治で、基地建設のための土地が強制的に収用された。返還後も基地が集中する。1995年の米兵少女暴行など、米軍絡みの事件や事故も繰り返される

▲「理不尽な状況を家族の物語からあぶり出す。作品が提示する問題は、いまの世界ともつながる」。翻訳した沈池娟(シムヂヨン)さんは言う。政治に翻弄(ほんろう)されながらもエイッと起き上がってきた家族の姿が、韓国の観客にどう響くのだろうか。