下村博文元文科相の政倫審で思い出した秦野章元法相の〝名言〟(2024年3月20日『サンケイスポーツ』-「甘口辛口」)

 

■3月20日 洗いざらい話せば国民の〝プチ・ヒーロー〟ぐらいにはなれるのでは、と思われた下村博文文科相もやっぱり永田町の住人として安穏と生きていく方を選んだらしい。自民党安倍派の事務総長を経験し裏金事件のキーマンとして野党が標的にしていたが「(派閥の)会計には全く関与していなかった」と弁明した。

 真相解明には重要な存在といわれるのが派閥の元領袖で絶大な影響力があった森喜朗元首相。審査会では立民の寺田学氏が「森元総理が派閥の会長を務めていたとき、還付や不記載の仕組みが始まったのでは」とストレートに切り込んだが、下村氏は「全く承知していない」とかわした。

 文科相時代、3000億円に膨れ上がった新国立競技場建設にストップをかけたことで森氏との不仲が始まったとか。派閥の会長になりたくて平身低頭したのに森氏がはねつけた。この際〝意趣返し〟で核心に触れる答弁も、との期待もあったが全くの空振りだった。

 政倫審には下村氏ら衆参合わせて10人が出席したが、知らぬ存ぜぬでますます疑惑は深まるばかり。この日は時刻も午後4時半過ぎ。大相撲で話題の尊富士、大の里の登場も近づきBSの映らない地域では、シラケ切った政倫審のテレビ中継にはイライラし「いいから早く真剣勝負の土俵に切り替えてくれ」と思った相撲ファンも多かったろう。

 下村氏は「ここでの証言は偽証罪に問われない。ぜひ証人喚問に出てほしい」と迫られると「そもそも偽証はしておらず、正しく説明していると思っている」。ああいえば、こういう。「政治家に徳目を求めるのは、八百屋で魚を求めるに等しい」との秦野章元法相の〝名言〟を思い出す。(今村忠)