裏金還流 下村博文氏が「知らなかった」は本当? 19年前にも報道「東京では報じず」と言うが、実は東京新聞にも…(2024年3月18日『東京新聞』)

 
衆院の政治倫理審査会で弁明する下村博文氏=18日、国会で(代表撮影)

衆院政治倫理審査会で弁明する下村博文氏=18日、国会で(代表撮影)

安倍派幹部だった下村博文文部科学相は18日、衆院政治倫理審査会(政倫審)で、派閥から所属議員へのパーティー券のノルマ超過分のキックバック(還流)を「知らなかった」と繰り返した。
しかし、安倍派(当時は森派)のキックバック疑惑は19年前にも共同通信が報じていた。
東京を地盤とする下村氏は「東京のメディアでは発信していなかったので」と言い逃れたのが、当時、東京新聞は朝刊1面で「パーティー券収入 裏金化か」の見出しで報じていた。(デジタル編集部)

森元首相らが手渡し、と報道

2005年の報道は、共同通信の配信記事。
複数の関係者の証言をもとに、当時会長だった森喜朗元首相ら派閥幹部が都内ホテルの一室で、ノルマを超えてパーティー券を販売した若手議員に対し、200万円のいわゆる「氷代」とともにキックバック分も手渡したと報じていた。
「パーティー券のキックバックは慣例」との関係者のコメントも載っていた。

◆下村氏「還付を受けていないから」

18日の衆院政倫審では、自民党井出庸生衆院議員や、公明党の中川康洋衆院議員が、この報道を紹介し、下村氏の認識を質した。
最初の質問者だった井出氏は「有名な話」として2005年の「静岡新聞共同通信の記事」と紹介し、当時、既に国会議員だった下村氏に「経験や記憶というものはなかったのか」と尋ねた。
2005年3月10日付け東京新聞の1面に載った「パーティー券収入 裏金化か」の記事

2005年3月10日付け東京新聞の1面に載った「パーティー券収入 裏金化か」の記事

下村氏は「還付(キックバック)を受けておりませんから、全く承知しておりませんでした」と答えた。

◆2005年の報道「東京のメディアは報じず」

その後、質問に立った中川氏は、「自分はキックバックを受けていなかったから知らなかった」とする下村氏の主張に疑義を呈した。
2005年の共同記事では、若手議員に200万円の「氷代」とともに、パーティー券販売の上乗せ分を渡していると報じていた。
森派幹部から直接、現金を受け取った記憶はあるのか」「還付を受けてなかったから私は関係ない、ここの部分は少し違う」と迫った。
下村氏は、自分はキックバックを受けていないと答えた上で、「私、東京の選挙区なので、東京のメディアではですね、2005年、そういうことを発信したところはなかったと思いますので、存じ上げておりません」と述べた。
すぐさま、中川氏は「実はこれ東京新聞と神奈川新聞も配信してます」と下村氏の事実誤認を指摘した。

◆「地元紙ですよ」不信感露わ

「地元紙ですよ。地元紙の一面の報道を知らなかったと」
最後の質問者だった共産の宮本徹衆院議員は、自らの質問を終えた後に2005年の報道を巡るやり取りに言及し、不信感を露わにして、こう畳みかけた。
「そういうことを言っていて、『信用しろ』と言われても、国民はみんな信用できないですよ」

◆「全く偽証していない」

自ら「説明責任を果たす」として、政倫審に乗り込んだ下村氏だったがが、最後まで不自然な回答を繰り返した。
「政倫審での証言は偽証罪にも当たらない」。日本維新の会の岩谷良平氏から証人喚問の出席を求められると、気色ばんでこう言い張った。
「私自身は本当に正直ですね、私自身が思ってることについて申し上げてますので、全く偽証しておりません」「そもそも疑惑について今説明しております。ここで私はきちっと説明できるというふうに思ってます」