同性婚札幌高裁判決 国会の不作為許されない(2024年3月19日『琉球新報 』-「社説」)

 同性同士の結婚を認めない民法などの規定は憲法違反だとして全国で6件起こされている訴訟で、札幌高裁で初の控訴審判決が出た。「性的指向は生来備わる人としてのアイデンティティーで、個人の尊重に関わる法の保護は同性愛者も同様に享受されるべきだ」として、三つの争点全てで違憲と判断した。現状を「人格が損なわれる事態」とした判決は重い。ただちに法整備の議論を始めるべきだ。

 一連の訴訟には三つの争点がある。憲法14条1項の「法の下の平等」、24条1項の「婚姻は両性の合意」と関連法の関係、24条2項で現行法の同性カップルの不利益をどう見るか―である。判断はまちまちだが、24条1項については、「両性」「夫婦」などの文言から異性の婚姻のみを想定しているなどとして地裁6判決とも合憲とした。
 これに対し札幌高裁判決は個人の尊重を大前提として、24条1項を「人と人の自由な結び付きとしての婚姻をも定める趣旨だ。同性間の婚姻も異性間と同じ程度に保障していると理解できる」とした。そして、憲法制定当時、同性婚が想定されていなかったとしても「個人の尊重がより明確に認識されるようになったとの背景のもとで解釈するのが相当だ」と判断した。「両性」には多様な性自認が含まれると考えるべきだろう。
 判決は同性婚を容認する国民が多数であることにも触れ「否定的な意見を持つ国民もいるが感情的理由にとどまっている」と指摘した。さらに「付言」で「時代の変化を受け止めることが重要」「同性婚を定めることは国民に意見の統一を求めることを意味しない」と強調した。
 2001年にオランダで世界で初めて同性婚が法的に認められ、日本では15年に性的少数者カップルや家族の関係を認めるパートナーシップ制度が始まった。一連の訴訟が起こされたのは19年だ。
 長期間にわたって放置されてきた人権侵害が、訴訟を通じて改められる歴史が繰り返されている。ハンセン病、強制不妊手術の問題がそうであり、昨年には、性別を変更する際に生殖能力をなくす手術を要件とする規定を最高裁大法廷が違憲とした。しかし判決だけでは決着しない。新たな法整備、社会の偏見の払拭など、課題は長く残る。
 同性婚の制度化に野党各党も与党である公明党も積極的だが、自民党だけが後ろ向きだ。小泉龍司法相は判決について「この問題は一人一人の家族観に関わり、広く影響が及ぶ。国民的なコンセンサスと理解が求められる」と従来の見解を繰り返した。
 しかし、これ以上、政府と国会の不作為は許されない。高裁判決が述べる通り、これはコンセンサスではなく、人権侵害の問題だからだ。国政選挙をはじめ各選挙で争点にするなどして政府と自民党を動かし、一刻も早く法整備に着手すべきである。