オスプレイ再開 原因説明尽くさず拙速だ(2024年3月19日『西日本新聞』-「社説」)

 事故原因を明らかにしないまま、日米両政府は飛行再開に踏み切った。根拠を示さずに問題はないと言われても信用できない。国民の不安を軽んじていないか。

 米軍は輸送機オスプレイの飛行を日本国内で再開した。昨年11月に横田基地(東京)所属の1機が鹿児島県の屋久島沖で墜落し、乗員8人全員が死亡した事故を受け、約3カ月にわたり全世界で飛行を停止していた。

 操縦ミスではなく機体の不具合が原因として、自衛隊も飛行を見合わせていた。

 再開に際し防衛省は「原因が特定され、安全に再開できることが確認できた」と説明した。事故原因となった部品の不具合について、米国から「極めて詳細な情報提供」を受けているという。

 ところが、具体的なことは「米軍の事故調査が継続しているため、明らかにすることができない」と口をつぐむ。

 どの部品に不具合があり、どう改善したか。再発防止の手だては万全か。それを説明せずに「安全だ」「信用してほしい」と繰り返すばかりでは、国民の懸念や怒りが収まるはずもない。飛行再開は拙速である。

 オスプレイは海洋進出を強める中国を念頭に、九州・沖縄の防衛力を強化する「南西シフト」の主力機と位置付けられている。

 米軍は普天間飛行場沖縄県)や横田基地などに約30機を駐機させている。陸上自衛隊木更津駐屯地(千葉県)に14機を暫定配備し、うち各1機が目達原(めたばる)駐屯地(佐賀県)と高遊原(たかゆうばる)分屯地(熊本県)に駐機する。2025年に整備される佐賀駐屯地(佐賀市)に移駐する計画だ。

 沖縄県では米軍のオスプレイの墜落や部品落下事故により、住民の命や暮らしがたびたび脅かされている。

 にもかかわらず飛行再開は強行された。防衛省が沖縄、鹿児島、佐賀などの関係自治体に伝えると、当然のように反発が広がっている。

 沖縄県の玉城(たまき)デニー知事は「到底納得できない」と日米両政府に抗議した。佐賀県山口祥義知事も「もう少し詳しく話がないと納得する形にならない」と不満を示す。

 岸田文雄首相の国会答弁も米追従で説得力を欠く。「安全確保を最優先として引き続き米側に情報共有を求め、地域の不安払拭に努める」と述べる程度だった。

 米下院の委員会によると、オスプレイは過去30年間の墜落によって50人以上が死亡している。米側でも安全性に疑念が持たれている。

 防衛省は機体整備の頻度を高めるなどの対策で異常を早く把握でき、安全性は確保できるという。そのくらいのことはこれまでも実行していたのではないか。隊員を危険にさらしてはならない。

 日米両政府は詳細な原因と安全対策を国民に公表する責任がある。それができるまで飛行を停止すべきだ。