自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件で、下村博文元文科相が政治倫理審査会に出席する意向を表明し、波紋を呼んでいる。
下村氏は、安倍晋三元首相が指示した安倍派のパーティー収入のキックバック(還流)「廃絶」が、死去後に復活した「裏切りの経緯」を知るとされる。衆院政倫審では、安倍派幹部の証言に食い違いがあった。幹部らと距離があったとされる下村氏は「捨て身の爆弾」を投じるのか。
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《私の名前も何度か出ましたので、今後政倫審が開催されるのであれば、党と相談して説明責任を果たしていきたいと考えています》
下村氏は4日、自身のX(旧ツイッター)で、こう意向を示した。 東京地検特捜部の立件対象にならなかった下村氏だが、事件の経緯を知る〝キーマン〟として注目されてきた。 安倍氏が凶弾に倒れた2022年7月以降、下村氏は派閥中枢から外され「集団指導体制」に入れなかった。ただ、一連の経緯を把握していたとされ、「政倫審で全容を暴露するのでは」(党中堅)との憶測まである。
現に、下村氏は1月の記者会見で〝爆弾〟を炸裂(さくれつ)させた。 下村氏によると、派閥会長だった安倍氏が22年4月、下村氏のほか塩谷立氏、西村康稔前経産相、世耕弘成前参院幹事長ら4幹部を集め、「還流廃絶」を決定したという。
安倍氏死去後の同8月、同じ4人が集まり、還流廃絶への不満の声などを受け、派閥が議員個人のパーティー券を購入することで代替の還流とする案が出たというのだ。 衆院政倫審では、野党が西村氏や塩谷氏を徹底追及した。還流復活の経緯を含め、真相はあやふやなままだったが、下村氏の発言が事実なら、4人が還流に絡む裏金化などの違法性を認識していた可能性もあるのだ。
下村氏は4日、記者団に政倫審出席について、「党に判断を任せる」と表明した。だが、森山裕総務会長は5日、「ご本人の判断」とし、浜田靖一国会対策委員長も「手を挙げれば開会が検討される」と述べ、党としての判断を示さなかった。 ベテラン議員は「岸田首相ら執行部は、一刻も早く『政治とカネ』の問題の大炎上を収束させたい。予測不能な下村氏の動きは押さえ込みたいのが本音だろう」と語る。
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