きょう参院で政倫審 安倍派の世耕弘成氏ら3人が出席へ 衆院では裏金づくり継続の経緯で証言に食い違いも(2024年3月14日『東京新聞』)

 
自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件を受け、参院政治倫理審査会(政倫審)が14日、いずれも安倍派の世耕弘成参院幹事長、西田昌司氏、橋本聖子元五輪担当相の3人が出席して開かれる。世耕氏の審査は午前10時過ぎから、西田氏は午後1時から、橋本氏は午後3時ごろから。
2月29日、3月1日に開かれた衆院政倫審では、岸田文雄首相や自民党安倍派幹部だった4人など計6人の審査が行われた。だが、派閥パーティー収入のキックバックを裏金にする安倍派の慣行が始まった時期や、いったん中止が決まった裏金づくりが継続されることになった経緯など、事件の核心部分は明らかにされなかった。
14日は、安倍派の有力者「5人衆」の1人だった世耕氏らが何を語るのか、注目される。
 

◆党の調査報告書をなぞる説明に終始

2月29日の衆院政倫審には、岸田文雄首相と、二階派事務総長だった武田良太総務相が出席した。現職の首相の政倫審出席は初めてだった。
岸田首相は冒頭の弁明で「党総裁として出席し、説明責任を果たすことにした。前例にとらわれないという私の決意だ」と意気込みを語ったが、その後の質疑では、既に公表されている党の聞き取り調査報告書などの内容をなぞるばかりだった。
立憲民主党野田佳彦元首相は、裏金づくりに関与した議員の処分をどうするのかも追及。だが、首相は「説明責任の果たし方と事実を踏まえて判断していく」などとあいまいな答弁に終始した。
武田氏は、二階派のパーティー収入が政治資金収支報告書に不記載になった経緯を説明した。自身や、派閥会長だった二階俊博元幹事長の関与は否定した。

◆裏金づくりが始まった経緯「判然としない」

3月1日は、安倍派の事務総長経験者の西村康稔経済産業相松野博一官房長官塩谷立文部科学相、高木毅前国会対策委員長が出席した。
 
衆院政倫審に出席した(左から)西村康稔氏、塩谷立氏、高木毅氏、松野博一氏

衆院政倫審に出席した(左から)西村康稔氏、塩谷立氏、高木毅氏、松野博一

この日の質疑で浮かび上がったのは、いったん中止が決まったキックバックが一転して継続されることになった経緯を巡る証言の食い違いだ。
4人の説明などによると、派閥会長だった安倍晋三元首相と西村氏、塩谷氏、世耕氏、下村博文文科相松本淳一郎事務局長(職員)が出席した2022年4月の会合で、安倍氏キックバックの中止を指示。その後、所属議員にその方針を伝えたものの、22年7月の安倍氏死去後の8月の会合を経て、中止の撤回が決まった。
4月の会合でキックバックの中止の流れになったことと、8月に再び会合が開かれたことについては、幹部間の証言は合致している。だが、塩谷氏が8月の会合でキックバックの継続が決まったと説明した一方、西村氏はこの会合では結論は出なかったと語った。高木氏は、これらの会合に出席していなかったとして「誰がどんな形でそうしたのかは、私には分からない」と答弁した。
2回の会合のいずれにも出席していたとされる世耕氏がこの点についてどう語るかが、14日の参院政倫審の焦点の一つとなる。

森元首相への調査や国会出席には後ろ向き

安倍派の裏金づくりが始まった経緯については、1日の衆院政倫審では、「歴代会長と事務局長との間で長年慣行的に扱ってきたことだ。判然としない」(西村氏)、「二十数年前から始まったのではないかと思うが、明確な経緯は承知していない」(塩谷氏)といった説明以上のものは聞かれなかった。
1日は、裏金づくりが始まったとみられる時期に安倍派(清和政策研究会)の会長だった森喜朗元首相への聞き取り調査や、国会への出席を求める質問も相次いだ。
だが、岸田首相は「自民党の調査では、森元総理の関与を指摘するような証言は確認されていない」などとして拒否。一方、西村氏は「森元総理が関与していたという話は聞いたことがない」とした上で、「疑念が生じるのであれば、(派閥の)幹部が確認しても口裏を合わせたのではないかと言われかねないので、第三者が確認するのがいい」と話した。(宮尾幹成)