離れ離れでも“SNS活用して集落のつながりを” 石川 輪島(2024年3月17日『NHKニュース』)

能登半島地震では、被災した多くの人が慣れ親しんだ土地を離れ、それぞれの避難先での生活を余儀なくされています。被害の大きさから今後、ふるさとには戻らず転居を検討せざるをえない人もいる中、石川県輪島市の集落では、離れ離れになってもSNSを活用して近況を伝え合いつながりを保っていこうという動きがあります。

輪島市の山あいにある別所谷町は地震による大規模な土砂崩れなどで一時、孤立状態となり、多くの住宅が倒壊したり崩れたりしました。

集落に住むおよそ50世帯のほとんどの人が県内での2次避難や県外での生活を強いられ、慣れない環境で過ごす中、長年築いてきた地域のつながりをどう維持していけるかが課題となっています。

こうした中、埼玉県本庄市に避難した保下正明さん(67)と妻のマチ子さん(65)は、離れていても思いを伝え合える環境を作ろうと娘の協力を得てSNSでグループチャットを立ち上げました。

集落の仲間やその家族をメンバーに加え、近況報告のほか、り災証明書の申請などの自治体から届く連絡を投稿していて、それぞれの思いや情報を共有できるようにしています。

グループチャットに加わった倉山邦雄さん(76)は、自宅が土砂崩れに巻き込まれるおそれがあることから金沢市内の娘の家に身を寄せています。

安全な環境で暮らせることに感謝しつつも、別所谷町で仲間と世間話をして過ごしたことや地震発生時には食べ物を持ち寄るなどして助けあったことを思い出し、寂しさを感じることもありました。

それでも、長年つきあいがあった保下さんに声をかけられてグループチャットに加わり、さまざまな思いを抱えながらも懸命に過ごしている仲間がいると感じたことで、前向きになれたといいます。

倉山さんは、「近況を知ることで『みんなと一緒に自分も頑張ろう』と思えて本当に心強いです。別所谷町でまたみんなに会える日を心待ちにしています」と話していました。

復旧・復興が進んだときに集落に戻るのか、それとも新たな場所で生活するのか、いまはほとんどの人が結論を出せない状況だということですが、保下さんは長年、苦楽をともにしてきた集落のつながりはどんな形でも保っていきたいと考えています。

保下さんは、「何十年も一緒に過ごし同じ釜の飯を食べてきた仲間なのでつながりが切れることは今後もないし、大事にしたい。今はまだみんな気持ちが落ち着かず、先のことを考える余裕はありませんが、かつて酒を酌み交わした仲間たちと、いつかまた笑って集まることができる日が来れば」と話していました。