“関係議員の処分 結論を”首相が指示 明らかに 自民党大会(2024年3月17日『NHKニュース』)

自民党の党大会が開かれ、岸田総理大臣は派閥の政治資金パーティーをめぐる問題を受けて、茂木幹事長に対し、関係議員の処分について結論を得るよう指示したことを明らかにしました。その上で、みずからが先頭に立って党改革と政治改革を断行すると強調しました。

党大会での発言や党則改正などについてお伝えします。

自民党大会で首相陳謝 処分についての指示明らかに 

自民党の党大会は、17日午前東京都内のホテルで開かれました。

演説で岸田総理大臣は派閥の政治資金パーティーをめぐる問題について「多くの疑念を招き、深刻な政治不信を引き起こす結果となり党総裁として国民に心からおわびする」と陳謝しました。

その上で、茂木幹事長に対し、関係議員の処分について結論を得るよう指示したことを明らかにし「収支報告書の不記載の金額や程度、これまでの役職などの議員歴や説明責任の果たし方など状況を総合的に勘案し党紀委員会の議論を経て、厳しく対応していく」と述べました。

さらにみずからや党幹部が全国を回り、国民の声を聴く「政治刷新 車座対話」を始めると説明し「私自身が先頭に立ち、党改革と政治改革を断行する」と強調しました。

経済をめぐっては「何よりも重要なのは『物価高を上回る所得の実現』だ」と述べ、賃上げに向けた取り組みを着実に進める考えを示しました。

茂木幹事長「一律同じ処分にはならない」 

自民党の茂木幹事長は「われわれは深い反省と危機意識に立ちこの党大会に臨んでいる。政治責任のあり方、けじめについて早期に厳正な対応をとっていく。自民党は必ず生まれ変わる。そして日本の再生を成し遂げる。それが責任政党の使命だ」と述べました。

そして、茂木幹事長は党大会のあと記者団に対し「岸田総裁は不記載の金額や、これまで務めてきた役職や立場、説明責任をどこまで果たしたかを総合的に勘案して処分方針を考えると話していた。その方向で検討したい」と述べました。

その上で「一律に全員が同じ処分ということにはならないと思っている。上に甘くて下に厳しい組織であってはならないと考えている」と述べました。

公明 山口代表「政権奪還以来、最大の試練」 

来賓として出席した公明党の山口代表は「連立政権は2012年の政権奪還以来、最大の試練に直面している。政治資金をめぐる問題が国民の大きな不信を招き、説明責任を果たそうとしても国民の納得感を得られるところに至っているとは言えない状況だ」と指摘しました。

その上で「国民の求めに応じ、説明責任を果たし、信頼回復に結び付けていただきたい。再発防止のため政治資金規正法の改正を成し遂げなければならない。自民党には具体案を早期に提案し、幅広い合意をつくり出す土俵を整えてもらいたい」と注文をつけました。

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【何が変わった?】党則改正 ガバナンス・コード改訂も

自民党は派閥の政治資金パーティーをめぐる問題を受けて党大会で党則などを改正しました。

具体的には、議員は政治資金規正法などに抵触する疑義が生じた時、説明責任を果たさなければならないとしています。

その上で、会計責任者が政治資金規正法違反で逮捕・起訴された時は、議員本人に対し、「離党の勧告」や「党員資格の停止」、「選挙における非公認」などの処分を行うことができるとしています。

さらに、会計責任者の有罪判決が確定し、議員も関与するなど政治不信を招く、政治的・道義的責任があると認められる時は、「除名」か「離党の勧告」の処分を行うとしています。

一方、会計責任者が議員の身分を失わせるなどの目的で犯罪を行ったことが判明した時は処分はなかったことにするとしています。

また党大会では、党の組織統治の指針にあたる「ガバナンス・コード」の改訂も報告され、資金力と人事への影響力を背景に議員を集め、数の力によって影響力を増やそうとする組織を「派閥」と定義し、こうした「派閥」の存続と新設を禁止するなどとしています。

「これまでの『派閥』から脱却し二度と復活させない」 

自民党が決定したことしの運動方針は派閥の政治資金パーティーをめぐる問題を踏まえタイトルを「政治を刷新し、改革の道を歩む」としています。

そして今回の問題で党全体に強い疑念が向けられていることを真摯(しんし)に反省し国民に深くおわびするとした上で「わが党みずからが変わらなければならず、解体的に出直す覚悟で不断の改革努力に最優先で取り組む」と強調しています。

派閥については「『お金』と『人事』から完全に決別することでこれまでの『派閥』から脱却し、二度と復活させない」と明記し、党機能やガバナンスを強化することや、政治資金規正法の改正などの法整備を早急に進める方針を示しています。

一方、憲法改正をめぐっては、ことし中の改正を実現するため、国民投票を通じて国民の判断をあおぐことを目指すとしています。

安倍派や二階派の議員の発言は

安倍派の西田昌司参議院議員は記者団に対し「原因を作った安倍派の幹部がしっかり説明責任を果たし、党に処分されるよりもみずから出処進退について責任を示すことが本人にも党にとってもいいことだ。総裁が厳しく覚悟を持った姿勢を示したことはよかった」と述べました。

同じく安倍派の柴山・元文部科学大臣は記者団に対し「岸田総裁や茂木幹事長から党の解体的な出直しの決意表明などがあったが、それに基づいてどう対応していくかがこれからの自民党に問われている。関係議員の処分などが今後の補欠選挙の結果を含めてどういう形で反映されるのかを見守りたい」と述べました。

二階派の大岡敏孝・衆議院議員は記者団に対し「安倍派のケースでは、責任のある立場の人と、言われた通り指示に従っていた人では処分の重さを変えるべきだと思う。派閥幹部は処分されるべき立場ではなく、みずから身の処し方を決めるのが当たり前だ」と述べました。

石破元幹事長「処分は透明性をもって」

自民党の石破・元幹事長は記者団に対し「派閥とカネ、人事をこれからどうするかが課題となるが、それをきちんとできるかどうかが問われることになる。いろいろなお怒りの声があることは百も万も知っているが、関係議員の処分は党紀委員会で透明性をもってきちんとしたルールのもとで行われるべきだ。感情でやってしまうと非常にまずいことになるので党のガバナンスという意味からも非常に大事なことだ」と述べました。

能登半島地震対応や経済など 党大会での首相発言 

能登半島地震への対応をめぐっては「被災者の帰還、被災地の再生に向けて『できることはすべてやる』『やらなければならないことは必ずやる』。責任をもって実行していく」と述べました。

また、ロシアによるウクライナ侵攻や中東情勢などに触れ「激動する国際社会に対応できるのは自公の連立政権以外にない。日本の安全と世界の平和のために責任を果たしていく覚悟だ」と述べました。

経済をめぐっては「何よりも重要なのは『物価高を上回る所得の実現』で、30年間続いたデフレ志向や縮み志向と完全に決別するため、ここで手を緩めるわけにはいかない」と述べ、賃上げに向けた取り組みを着実に進める考えを示しました。

さらに憲法改正について「総裁任期中に実現するとの思いのもと、ことしは条文案の具体化を進め党派を超えた議論を加速していく」と述べました。

安定的な皇位継承のあり方をめぐっては、皇族数を確保するための具体的方策などを取りまとめ、国会で検討を進めていきたいという考えを示しました。

そして演説の最後に、来月行われる衆議院補欠選挙を全力で戦い抜くとした上で「わが国はいま、国の内外に日本の未来を決めるような課題が山積している。自民党でなければならないからこそ自民党は変わらなければならない」と述べ、結束を呼びかけました。

 

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