政倫審 岸田首相「説明責任 見極めながら処分判断」(2024年2月29日『NHKニュース』)

自民党の派閥の政治資金パーティーをめぐる問題を受けて衆議院政治倫理審査会が開かれ、岸田総理大臣が現職の総理大臣として初めて出席しました。岸田総理大臣は国民の政治不信を引き起こしたと陳謝した上で、関係議員の説明責任の果たし方などを見極めながら処分などを判断していく考えを示しました。
記事後半では、29日の政治倫理審査会の経過詳細などについてお伝えしています。

岸田首相 現職首相で初出席 武田元総務相

衆議院政治倫理審査会は報道機関に公開する形で開かれ、29日は岸田総理大臣と二階派の武田・元総務大臣の2人が出席しました。審査会に現職の総理大臣が出席するのは初めてです。

冒頭の弁明で岸田総理大臣は「国民の多くの疑念を招き、政治不信を引き起こしていることに対し自民党総裁として心からおわびを申し上げる」と陳謝しました。
その上で「不正の原因が順法意識の欠如にあったとしたならば、コンプライアンスの徹底に向けた改革を進めなければならない」と述べました。
一方で、岸田総理大臣は「これまでのところ、派閥が支出した資金を議員個人が受領した例は聴き取り調査を含めて把握されていない。また、還付金などを政治活動費以外に使用したり、違法な使途に使用した例も把握されていない」と説明しました。
このあとの質疑で、岸田総理大臣は「連座制」について「悪質な場合には会計責任者のみならず政治家本人も責任を負う法改正を行うことが重要と考え、党でも具体的な制度設計の議論を進めている。各党とも議論し合意した上で今の国会のうちに法改正が実現できるよう作業を進めていく」と述べました。
さらに立憲民主党の野田・元総理大臣は「『裏金』に関わった議員は全員重たい政治責任がある。刑事事件にもならない、説明責任を果たさない、税金も払わない、処分もない、何にもないのだったら同じことがまた起こる。そろそろリーダーシップをふるって処分を考えるべき時期ではないか」とただしました。
これに対し、岸田総理大臣は「党としてさまざまな実態把握に努めているが、関係者の説明責任の果たし方や事実の状況もしっかり踏まえながら、党として処分をはじめとする政治責任についても判断を行っていきたい」と述べました。
また岸田総理大臣は、安倍派でキックバックや収支報告書への不記載などが、いつから、誰の指示で始まったのか問われたのに対し「党の聴き取り調査の中で関係者に質問を繰り返したが、残念ながら、はっきりした経緯や日時などは確認できていない」と説明しました。
一方、岸田総理大臣は自身の政治資金パーティーについて「総理大臣としてパーティーを開催することは、今は考えていない。結果的に在任中はやることはないと考えている」と述べました。

続いて行われた審査で、二階派の事務総長を務めた武田・元総務大臣は「多くの国民の政治不信を招くに至ったことを心からおわび申し上げたい」と陳謝しました。
その上で、二階派の収支報告書の不記載について「私も、派閥会長の二階元幹事長も会計責任者から収支報告書の内容の説明を受けることなく、虚偽記載などが行われていたことは全く知らなかった。二階氏も私も全く関与していない」と釈明しました。
そして、パーティー券の販売ノルマを誰が決めていたのか問われ「25年前から実務を担当している事務局長に委ねていて、私や二階会長がルールやノルマなどを決めることは全くしていない。裏金づくりなどは毛頭考えていない」と述べました。

《政倫審 終了後の各党反応》

自民 丹羽氏「説明責任 ある程度果たせた」

衆議院政治倫理審査会の与党側の筆頭幹事を務める自民党丹羽秀樹衆議院議員は記者団に対し「フルオープンで開催することができ、国民に政治の姿勢を見せて説明責任をある程度果たせたと考えている。あすは安倍派の議員が出席するので、しっかりと説明責任を果たしていただきたい」と述べました。その一方で「すべての疑惑が晴れたかは多くの国民の意見を聞かなければわからない。あすも含めてまだ6人しか審査の申し出がないので、人数という意味でも『ある程度』ということだ」と述べました。

立民 野田元首相「ポーズだけの率先垂範」

立憲民主党の野田・元総理大臣は、衆議院政治倫理審査会での質疑のあと、記者団に対し「ポーズだけの率先垂範だった。窮地に陥り、局面打開でやろうとした審査会なので、予想どおり、自民党の報告書をなぞるだけでそれ以上のことはなかった。これで説明責任を果たしたことには全くならない」と述べました。
その上で、岸田総理大臣が在任中、みずからの政治資金パーティーを行わない考えを示したことについて「総理大臣になったらパーティーはやめないといけない。『勉強会』と称していたが、勉強が好きではなく、お金が好きだということだ。しつこく追及し、いやいや認めたというところではないか」と述べました。

維新 藤田幹事長「予算委と同じようなあいまいな答弁」

日本維新の会の藤田幹事長は、衆議院政治倫理審査会のあと、記者団に対し「真相を究明して次に向かっていく意味では非常に不十分だった。特に岸田総理大臣は、自民党が行った聴き取り調査の結果を解説しているだけで、これまでの予算委員会と同じようなあいまいな答弁だった。『自分が審査会に出る』と言って安倍派と二階派の5人をひきずり出した効果以外、なかった」と述べました。その上で「あすは安倍派の4人が出席するが、長年にわたり、組織的に違法行為を行ってきた経緯を明らかにすべきで、良心に従ってすべて話してもらいたい」と述べました。

注目

==政倫審 経過詳報==

【13:50すぎ】岸田首相 政倫審の委員室に入室

岸田総理大臣は午後1時50分すぎ、総理大臣官邸を出ました。そして国会に入り、政治倫理審査会が開かれる衆議院の第5委員室に入りました。

【14:00ごろ】衆院政倫審 始まる

 

衆議院政治倫理審査会が始まりました。議員の傍聴や報道機関の撮影・録音を許可する手続きが行われたあと、いったん休憩となり、傍聴する議員や報道関係者が部屋に入ります。

いったん休憩

衆議院政治倫理審査会は、冒頭、議員の傍聴や報道機関の撮影・録音を許可する手続きが行われ、いったん休憩となりました。

岸田首相の弁明 始まる

衆議院政治倫理審査会は、先ほど再開し、岸田総理大臣の弁明が始まりました。弁明は、15分間行われる予定です。

田中 政治倫理審査会長「簡明に説明責任を」

審査に先立ち、田中・政治倫理審査会長は「政治倫理の確立に資するため、議員みずからの申し出に基づく審査だ。申し出人である岸田議員には簡明に国民に対する説明責任を果たしてもらいたい。質疑者にも真摯に解明に努力するよう期待する」と述べました。

岸田首相「政治不信 引き起こし 心からおわび」

 

岸田総理大臣は「政治倫理審査会への出席にあたり、まず、自民党の派閥の政治資金の問題をめぐり、国民に多くの疑念を招き、政治不信を引き起こしていることに対し自民党総裁として心からおわびを申し上げる」と述べました。

岸田首相「自信持ち引き継ぐことができるか」

岸田総理大臣は「いま私は『すなわち後来の種子いまだたえず』、志を持った有望な人材を将来に引き継いでいくことの大切さを述べたこの言葉をかみしめている。私たちは、いまの政治を未来の世代に自信を持って引き継ぐことができるだろうか。このことを思うときに本当に申し訳なく思う」と述べました。

岸田首相「改革を進めなければならない」

岸田総理大臣は「なぜ、何かがおかしいと思いながら、長年続いてきた不記載の慣行を是正できなかったのか。その原因が、日本の政治に根付く当選回数優先主義や、長いものに巻かれる風土などにあるとすれば、風通しのよい政治の風土を作っていかなければならない」と述べました。
また「なぜ、政治資金の収支は明確にするとの当然のルールすら守れなかったのか。その原因が、政治における順法意識の欠如にあったとしたならば、コンプライアンスの徹底に向けた改革を進めなければならない」と述べました。
さらに「なぜ、問題が生じた際に、政治家自身の責任が十分に果たされないのか。その原因が、政治は特別なものとの特権意識があったとすればそうした特権意識を是正し、政治家も当然の責任を果たすように改革を進めなければならない」と述べました。

岸田首相「古い派閥のあり方から決別することを決断」

岸田総理大臣は「政治への信頼を回復するために私自身が先頭に立って、前例や慣習にとらわれることなく改めるべきは改めていく。まずは自浄作用が求められている自民党が抜本的な出直しをしていかなければならない」と述べました。その上で「第一歩として、私は古い派閥のあり方から決別することを決断した。そして本日、自民党総裁として政倫審にみずから出席し、マスコミオープンのもとで説明責任を果たすこととした。これも前例にとらわれないとの私の決断だ」と述べました。

岸田首相「判明した事実の概要を説明する」

岸田総理大臣は「検察は、いずれの派閥においても、証拠上、収支報告書の作成は、代表者兼会計責任者を含む会派事務局がもっぱら行っており、捜査の結果、派閥幹部の関与は認められなかった旨、発表している。他方、刑事責任とは別に、道義的責任や政治的責任が生じるのではないかとの指摘もある」と述べました。その上で「自民党では、わたしの指示のもと、2つの弁護士事務所の7人の弁護士にもご参加いただき、事案の実態解明に向けた調査を行った。検察の捜査によって判明した事項と合わせて、これまでに判明した事実の概要を説明する」と述べました。

各党委員による岸田首相への質疑開始

衆議院政治倫理審査会は、岸田総理大臣の弁明が終了しました。続いて各党の委員による質疑が始まりました。

岸田首相「10数年前から行われていた可能性高い」

岸田総理大臣は「現在、順次報告書の訂正や会見などによる説明が行われているが、聴き取り調査の結果では、こうした事案が具体的にいつどのようにして始まったのかは判然としないものの遅くとも10数年前から行われていた可能性が高いことが明らかとなっている」と説明しました。また「還付などの手続きの過程で派閥の事務局側から所属議員などの議員事務所に対し、還付金などを政治資金収支報告書に記載しないように指導していた例があったことが判明している」と述べました。

岸田首相「個人受領、違法使途の使用は把握せず」

岸田総理大臣は「これまでのところ、派閥が支出した資金を議員個人が受領した例は聴き取り調査を含めて党において把握されていない。また、還付金などを政治活動費以外に使用したり、違法な使途に使用した例も把握されていない」と述べました。

岸田首相「還付金など 少なくとも10年前から」

岸田総理大臣は「聴き取り調査を通じて、このような還付金などの取り扱いは、少なくとも10年前から続いていたことが判明している一方、志帥会においては、派閥から議員側に対し、そうした取り扱いの指示、説明などがあったとの回答はなかった」と述べました。

岸田首相「『宏池会』不記載は事務処理上のミス」

岸田総理大臣はみずからが会長を務めていた「宏池会」(=岸田派)の収支報告書の不記載について「いずれも、当時の会計担当者の会計知識の誤解や帳簿作成上の転記ミスなど、事務処理上の疎漏によるものであり、これらの状況については、事務総長が記者を交えた場で説明を行ったほか、私自身、予算委員会の場で説明してきたところだ」と述べました。

岸田首相「改革を断行していく必要」

岸田総理大臣は「引き続き、関係議員などがあらゆる機会を利用して説明責任を果たすことが重要で、党としても促していく。また改めるべきは改め、改革を断行していく必要がある。そのため、私が本部長となる政治刷新本部を立ち上げ、国民の信頼回復に向けて取り組むべき事項を『中間とりまとめ』として決定し、改革の断行に着手している」と述べました。そして「すでに、本件の発端となった派閥パーティーを禁止するなど、派閥から『お金』と『人事』を切り離すこととした。コンプライアンスを徹底するため、会計責任者が逮捕・起訴などの事態になった場合、その団体の代表を務める議員も事案の内容に応じて処分できるようにするなど、来月17日の党大会に向けて党則などの改定作業を進めている」と述べました。

岸田首相「再発防止策と関係者の処分など党として判断」

岸田総理大臣は「あるべき政治資金規正法の改正についても、党の政治刷新本部のワーキンググループで、第1に責任の強化として一定の悪質な場合に、会計責任者のみならず政治家本人も責任を負う法律改正を行うこと、第2に外部監視の目の強化として、政治団体に対する監査について対象・範囲を拡大する法律改正を行うこと、第3にデジタル化の推進・強化として、収支報告書のオンライン提出促進や銀行振込の推進に向けた法律改正を行うことを指示している」と述べました。そして「こうした再発防止策と並行して事実の確認に努め、関係者の処分など、政治責任についても党として判断していく」と述べました。

岸田首相「信頼回復に向け覚悟を示させて頂く」

岸田総理大臣は政治倫理審査会に出席した理由について「政治倫理審査会は議員本人の意思が尊重されるもので、そうしたルールが最大限尊重されるべきだと申し上げてきたが、現状をみたときに、このままでは国民の政治に対する不信がますます高まってしまう強い危機感を感じた。こうしたことを踏まえて、前例にとらわれることなく、マスコミオープンで説明責任を果たさせて頂きたいと決意した」と述べました。
その上で「今回の事態を招いたことについて自民党総裁として改めて心からおわびを申し上げること。私自身、先頭に立って信頼回復に向けて努力していく覚悟を示させて頂くこと。この2点を特に申し上げたく来させて頂いた」と述べました。

岸田首相「会計責任者だけでなく政治家本人の責任も追及」

岸田総理大臣は「会計責任者だけではなく政治家本人の責任をしっかりと追及、確認できるような仕組みを法律の上でも実現しなければならない。外部の監査の目を会計に導入することや、デジタル化などを通じて政治資金の透明化を進めることは、法律の改正でしっかり取り組まなければならない」と述べました。

岸田首相 「“連座制”今国会で法改正を」

岸田総理大臣は「連座制」について「一定の悪質な場合には会計責任者のみならず政治家本人も責任を負う法改正を行うことが重要だと考え、いま党でも具体的な制度設計の議論を進めている。各党の皆さんとも議論し、合意した上で法改正を実現していかなければならない。自民党もこの問題の重要性をしっかり認識し、法改正を今国会のうちに実現できるよう作業を進めていく」と述べました。

岸田首相「私が出席することで説明責任」

 
立憲民主党 野田 元首相

立憲民主党の野田・元総理大臣は「審査会の開催や公開が迷走したのは、自民党のガバナンスの問題だ」と指摘し、党の総裁として責任をどう感じているかただしました。
これに対して岸田総理大臣は「政治倫理審査会は本人の意思を尊重することが規程に明記されており、規程に基づいて開催が議論されていたと承知している。結果として開催の見通しが立たなかったため、私が出席することで説明責任を果たし、国民の厳しい目に政治の立場から答えるべく努力しなければならないという思いだ」と述べました。

岸田首相「出席は本人の意思を尊重」

立憲民主党の野田元総理大臣は、政治倫理審査会の開催に向けた経緯について「働きかけをしたのか指示をしたのか分からないが、後手に回って的外れな対応をしなければいけない事態になったのは岸田総理大臣の指導力の問題だ」と指摘しました。
これに対し、岸田総理大臣は「政治倫理審査会は規程で本人の意思を尊重すること、そして出席や形式についても本人の意思を尊重すると明記されている。しかし、それぞれの立場で国民の不信に対して政治の立場からしっかり対応し、信頼回復に努めるという思いで出席することは重要だ。出席を指示するとか命令するとか、そういったものではない」と述べました。

岸田首相「党として処分、政治責任も判断」

 

立憲民主党の野田・元総理大臣は「『裏金』に関わった議員は全員重たい政治責任がある。刑事事件にもならない、説明責任を果たさない、税金も払わない、処分もない、何にもないのだったら同じことがまた起こる。そろそろ党として、総裁としてのリーダーシップをふるって処分を考えるべき時期ではないか」とただしました。
これに対し、岸田総理大臣は「法律上の責任以外にも政治家として道義的な責任はあると思う。いま党としてさまざまな実態把握に努めているが、関係者の説明責任の果たし方や事実の状況もしっかり踏まえながら、党として処分をはじめとする政治責任についても判断を行っていきたい」と述べました。

岸田首相「私のパーティー 疑念 招くものにあたらない」

立憲民主党の野田・元総理大臣は「岸田総理大臣は2022年に7回もパーティーを開いており、異常ではないか。『勉強会』とごまかすのはやめたほうがいい。どう見ても法令上は政治資金パーティーであり、内閣総理大臣としての内なる規範はないのか」とただしました。
これに対し、岸田総理大臣は「私のパーティーは、総理大臣就任前から続けている勉強会で、大臣規範にある国民の疑念を招くものにはあたらない。大事なのは説明であり、国民から疑念を招かないように、しっかり説明した上で大臣規範についても考えていくのが、あるべき姿ではないか」と述べました。その上で「政治資金パーティーなどが総理大臣としての職務に影響を与えたことはない」と述べました。

岸田首相「在任中はパーティー開催はない」

岸田総理大臣は「総理大臣としてパーティーを開催することは、今は考えていない。結果的に在任中はやることはないと考えている」と述べました。

岸田首相「『宏池会』不記載 6年以上前は確認できず」

岸田総理大臣はみずからが会長を務めていた「宏池会」(=岸田派)の収支報告書の不記載について「平成29年以前、6年以上前については資料は確認できなかった。資料などがないので、私自身、実態を確認することはできていない」と述べました。

岸田首相 キックバック「経緯など確認できていない」

 

岸田総理大臣は、安倍派でキックバックや収支報告書への不記載などが、いつから、誰の指示で始まったのか問われたのに対し「党の聴き取り調査の中で関係者に質問を繰り返したが、残念ながら、はっきりした経緯や日時などは確認できていない。だからいいと言うつもりはなく、今後も政治倫理審査会をはじめ、さまざまな場で関係者の説明が続けられなければならない。その中で経緯についても確認されることは重要なことだ」と述べました。

岸田首相「森元首相 関与の報告なし」

 

岸田総理大臣は、かつて安倍派の前身となる派閥で会長を務めた森元総理大臣の関与について「少なくともヒアリングの中で、森元総理大臣が直接関わったという発言があったとは報告を受けていない」と述べました。

岸田首相 還付復活「経緯について十分確認できず」

岸田総理大臣は「自民党の報告書では、安倍派でいったんやめると決定した還付を、誰が復活させたのかわからないとしているが、それを調べたのか」と問われたのに対し「結果として、経緯については十分確認できなかった」と述べました。

岸田首相の弁明への質疑終了

衆議院政治倫理審査会は、岸田総理大臣の弁明に対する質疑が終わり、いったん休憩に入りました。岸田総理大臣は、衆議院第5委員室を退室し、国会を出ました。

武田 元総務相の弁明 始まる

衆議院政治倫理審査会が再開し、自民党二階派の事務総長を務めた武田・元総務大臣の弁明が始まりました。そして弁明が終了し、各党の委員による質疑が始まりました。

武田氏「政治不信を招き心からおわび申し上げたい」

 

武田・元総務大臣は「今般の政治資金パーティーの会計処理問題に対し、長きにわたって志帥会ならびに志帥会のメンバーに対し、力強いご支援をいただいた全国の皆様方に大変なご心配をおかけし、多くの国民の政治不信を招くに至ったことを心からおわび申し上げたい。本当に申し訳ありません」と述べました。

武田氏「名寄せが徹底できなかったことが原因」

武田・元総務大臣は同じ人や団体が派閥のパーティー券を20万円を超えて購入したにもかかわらず、収支報告書に、名前が記載されていないケースがあったことについて「複数の議員事務所の関係で購入して頂いた結果、総額で20万円を超えた団体があったことを派閥の事務局で十分把握できず結果として記載が漏れてしまった。ばく大な数の振り込みや、現金支払いからの名寄せ作業は事務局にとって相当過酷で、名寄せが徹底できなかったことが原因だった」と述べました。

武田氏「私も二階氏も全く関与しておらず」

武田・元総務大臣は「私も、派閥会長の二階元幹事長も会計責任者から収支報告書の内容の説明を受けることなく、虚偽記載などが行われていたことは全く存じ上げていなかった。会計責任者が政治資金規正法違反で在宅起訴され、今後裁判を控えている。二階氏と私も刑事告発を受けたが、全く関与しておらず、検察が不起訴と判断している」と述べました。

武田氏「志帥会 解散に向けた準備を進めている」

武田・元総務大臣は「このような事態となったことを志帥会として大変重く受け止め、総会で、政治団体としての志帥会を解散することを決め、現在、解散に向けた準備を進めているところだ」と述べました。

武田氏「経常経費や政治活動費として使用」

武田・元総務大臣は、みずからの政治団体の収支報告書を訂正したことについて「派閥の政治資金パーティーの売り上げのうち、ノルマを超える額は、秘書の判断で、みずからの政治団体主催のパーティーの収入として収支報告書に計上し、経常経費や政治活動費として使っていた」と述べました。

武田氏「一番説明責任を果たせるのは私だと思い出席」

武田・元総務大臣は、派閥の会長を務める二階元幹事長ではなく、自身が出席したことについて「二階元幹事長は紛れもなく派閥の象徴だが、事務や経理に関わることはなく若手の指導などに励んでいた。私自身も経理だけは事務局長にすべて任せていたが、事案が発生して数々の作業に携わり、一番説明責任を果たせるのは事務総長である私だと思い、政治倫理審査会に出席した」と述べました。

武田氏「出席で一切の条件をつけたことはない」

武田・元総務大臣は「先週月曜日にみずからの意思で審査会に出席することを党に伝えて以来、私は一切の条件をつけたことはない。こんにちまで定められた日を待っていたわけで、公開であろうとなかろうと、細かい条件を付けたことは一切ない」と述べました。

武田氏「会計責任者のミスであることは共通」

武田・元総務大臣は、二階派に所属していた議員のうち二階元幹事長や自身を含む5人の議員が収支報告書を修正したとした上で「それぞれの事務所の原因は違うが、会計責任者のミスであるということは共通している。5つの政治団体に関しては支出先などについても領収書を提出し、すべて訂正を総務省に上げている」と述べました。

武田氏「私や二階氏がノルマ決定などしていない」

武田・元総務大臣は、派閥のパーティー券の販売ノルマを誰が決めていたのか問われたのに対し「25年前から実務を担当している事務局長に委ねていて、その流れに従ってきた。私や二階会長がルールを決めたり、ノルマを決めたり、制度のシステムを決めたりすることは全くしていない」と述べました。

武田氏「幹部は裏金づくりなどは毛頭考えていない」

 

立憲民主党の寺田学氏は「二階派に関しては、派閥の幹部や幹部を経験した人だけミスが起き、収支報告書を訂正することになっているのはなぜか」とただしました。
これに対し、武田・元総務大臣は「そういうことについて幹部だけで打ち合わせをすることは一切なく、裏金づくりなどは毛頭考えていない。詳細は25年務めた事務局長が掌握しており、われわれは存じ上げないことだらけだ」と述べました。

武田氏 政倫審出席「誰からも指示はない」

武田・元総務大臣は、岸田総理大臣や自民党幹部から政治倫理審査会に出席するよう指示を受けたか問われ「誰からもそうした指示を受けたことはない」と述べました。

武田氏「二度と起こらないように肝に銘じて」

武田・元総務大臣は「国民の不信を招いたことを深く反省し、二度と起こらないように肝に銘じて国家国民のために励むことを誓い、実行に移していく。これが国民に対する一番の謝罪行為だ」と述べました。

武田氏「チェック機能が働かず反省」

武田・元総務大臣は、二階派の事務総長を務めた自身の責任について問われたのに対し「すべてを会計責任者に丸投げで任せきり、チェック機能が働いていなかったことを、本当に反省している。しっかりチェックすることで、国会審議に支障をきたしたり、多くの国民に不信を抱かせたりすることにはつながらなかったのではないかと、悔やまれてならない」と述べました。

武田氏 繰越金の増加「実態解明に努めたい」

 

共産党塩川鉄也氏は二階派のおととしの収支報告書では、よくとしへの繰越額が1億4800万円増加していると指摘し「裏金だったものを表に出さざるを得なくなったのではないか」とただしました。
これに対し、武田・元総務大臣は「そのことについても事務局長しか知り得ないことで、今後しっかりと追及して実態解明に努めたい」と述べました。

武田氏の弁明への質疑終了 29日の政倫審終了

衆議院政治倫理審査会は、自民党二階派の事務総長を務めた武田・元総務大臣の弁明に対する質疑が終わりました。衆議院政治倫理審査会は、29日の日程をすべて終えました。

現職首相の出席は初 報道機関に公開して開催

今回の問題を受けた衆議院政治倫理審査会は、岸田総理大臣がみずから出席する意向を表明し、審査を申し出た結果、29日と3月1日の2日間、安倍派と二階派の事務総長を務めた5人を含め、報道機関に公開する形で開かれます。
初日の29日はこのあと午後2時から始まり、岸田総理大臣と二階派の武田・元総務大臣の2人が出席します。
審査会に現職の総理大臣が出席するのは初めてで、岸田総理大臣は丁寧な説明を行い国民の信頼回復につなげたい考えです。
官房長官は午前の記者会見で「岸田総理大臣は自民党総裁として政治資金をめぐる国民の厳しい目や疑念を踏まえ説明を尽くすものと考えている」と述べました。
これに対し、野党側は自民党総裁としての責任を厳しく追及する方針です。
立憲民主党の長妻政務調査会長は、記者会見で「予算委員会と同じ答弁であれば逆に国民の批判は高まる。新たな事実や中身をきちんと話すか否かが岸田総理大臣の正念場だ」と述べました。
岸田総理大臣と5人の議員が審査会で国民の納得が得られる説明を果たせるかどうかが焦点となります。

《各党反応(29日)》

官房長官「疑念踏まえ 説明を尽くすものと考えている」 

官房長官は、29日午前の記者会見で「政治倫理審査会での議論について予断を持ってコメントすることは控えるが、岸田総理大臣は自民党総裁として政治資金をめぐる国民の厳しい目や疑念を踏まえ説明を尽くすものと考えている」と述べました。

立民 長妻政調会長「同じ答弁なら国民の批判高まる」

 

立憲民主党の長妻政務調査会長は記者会見で「岸田総理大臣が呼ばれもしないのに審査会に出る『道連れ作戦』をしないと公開の場に出ない自民党中枢の面々はいったい何を考えているのか。岸田総理大臣も予算委員会と同じ答弁であれば逆に国民の批判は高まる。新たな事実や中身をきちんと話すか否かが岸田総理大臣の正念場だ。インチキなのか一定程度、誠実に説明するかの分岐点になる」と述べました。また、与党側が新年度予算案を週内に衆議院を通過させたいとしていることについて「きょうとあすは審査会が開かれ、これはいち国会議員の話ではなく、政治全体の話だ。審査会の答弁ぶりを見極めるのが前提であり、採決は拙速すぎる」と述べました。

公明 山口代表「信頼回復に結びつくようなやり取り期待」

 

公明党の山口代表は党の中央幹事会で「何のために審査会を開くのかを踏まえ、政治の信頼回復に結びつくような弁明ややり取りを期待したい。また、新年度予算案については、能登半島地震に対応するための措置も含まれているので、与野党合意の上で自然成立が確保できるよう衆議院での可決をやり遂げていただきたい」と述べました。

教育 前原代表「不十分なら参考人招致や証人喚問を」

 

教育無償化を実現する会の前原代表は記者会見で「リーダーシップをとらず各派閥で説明するよう繰り返し求めていた岸田総理大臣が、この期に及んで政治倫理審査会に出席するのは唐突で、違和感を持たれてもしかたがない。全員が公開の場で審査会が開催されるのはよかったが、中身が足りなければ、参考人招致や証人喚問をして国民目線で説明責任を果たすことが大事だ」と述べました。

《29日の予定》

衆議院政治倫理審査会は29日と1日の2日間開かれ、初日の29日は、岸田総理大臣と二階派の事務総長を務めた武田・元総務大臣が出席します。

【1人あたりの時間:1時間20分】
▽議員本人の弁明:15分
▽各党の委員による質疑:1時間5分
▽14:00 審査会が開会
冒頭、議員の傍聴や報道機関の撮影を許可する手続きなどを行ったあといったん休憩に入り、傍聴する議員と報道関係者が部屋に入ります。


▽14時10分ごろに再開
岸田総理大臣の弁明に続いて

自民党が15分
立憲民主党が22分
日本維新の会が10分
公明党が10分
共産党が8分の持ち時間で質疑

▽質疑は15時半ごろに終わる見込み
審査会は再び10分間の休憩に入り、岸田総理大臣に替わって武田氏が部屋に入ります。

▽再開後は、岸田総理大臣の時と同じ流れで、武田氏の弁明と各党の質疑が行われ、17時ごろに29日の審査が終わると見込まれています。

《3月1日の予定》

9時に開会
▼午前中:▽西村・前経済産業大臣と▽松野・前官房長官
▼午後:▽塩谷・元文部科学大臣と▽高木・前国会対策委員長が、
それぞれ出席し、本人による弁明と質疑が行われます。

武田良太(たけだ・りょうた)氏 総務相など歴任

武田良太氏は衆議院福岡11区選出の当選7回で、これまでに総務大臣国家公安委員長などを歴任しています。所属していた二階派では2021年10月から事務総長を務めました。今回の問題を受けて、自民党が行ったアンケートでは、政治資金収支報告書に記載していなかった派閥のパーティー券収入がおととし(2022年)までの5年間で1926万円あったと報告しています。1月に行った記者会見では自身の政治団体の収支報告書の不記載について「詳細は把握しきれていなかった」と述べていました。

武田良太氏 収支報告書の訂正は

武田氏は、自民党が行ったアンケートで、政治資金収支報告書への不記載などの金額が、おととしまでの5年間にあわせて1926万円あったとしていて、年ごとの内訳は
▽2018年が494万円
▽2019年が260万円
▽2020年が388万円
▽2021年が706万円
▽2022年が78万円となっています。

自身が代表を務める政治団体武田良太政経研究会」のおととしまでの3年分の政治資金収支報告書に派閥からの収入、あわせて1172万円を記載していなかったとして、1月18日に収支報告書を訂正しています。武田氏の事務所は収支報告書の訂正について「集計ミスがあり訂正手続きを行った。今後は二度とこのような事が起こらないよう再発防止に努める」などとしていました。

◇岸田派と岸田首相の政治資金パーティー

自民党内の第4派閥だった岸田派は、去年12月まで岸田総理大臣が会長を務めました。今回の事件で自民党内では当初、安倍派と二階派が、検察による立件の対象と見られていましたが、その後、岸田派も対象となることが明らかになり、これを受けた形で、岸田総理大臣が解散を表明しました。
そして、元会計責任者が2020年までの3年間に3059万円のパーティー収入などを政治資金収支報告書に記載していなかったとして、政治資金規正法違反の虚偽記載の罪で略式起訴され、有罪が確定しています。ただ、所属議員へのキックバックは行われていなかったとされ、党の聴き取り調査でも岸田派の議員は対象になりませんでした。

一方、国会では、岸田総理大臣自身の政治資金パーティーや、おととし広島市で開いた就任祝賀会について野党側が追及しています。2月26日の衆議院予算委員会では立憲民主党の野田・元総理大臣が「おととしだけで7回もパーティーを開いたのは異常なペースだ」と指摘しました。さらに、野田氏がおととしの祝賀会について「脱法パーティーではないか」と質問したのに対し、岸田総理大臣は「地元の経済界・政財界の皆さんが発起人となって開催していただいた純粋な祝賀会だ。政治資金パーティーではないと認識している」などと答弁しています。

◇派閥の政治資金パーティーめぐる事件

自民党の派閥の政治資金パーティーをめぐる事件で、東京地検特捜部は、安倍派、二階派、岸田派の会計責任者や元会計責任者、さらに、派閥の議員やその秘書らあわせて10人を、政治資金規正法違反の虚偽記載の罪で立件しています。
【安倍派「清和政策研究会」】
会計責任者がおととしまでの5年間で、パーティー収入など6億7503万円を派閥の政治資金収支報告書に収入として記載していなかったほか、支出についても、主に議員側にキックバックした分の6億7654万円を記載せず、虚偽記載をしたとして、在宅起訴されています。
二階派志帥会」】
会計責任者がおととしまでの5年間でパーティー収入など2億6460万円を記載せず支出についても、1億1622万円を記載せずに虚偽記載をしたとして、在宅起訴されています。
【岸田派「宏池政策研究会」】
元会計責任者が2020年までの3年間のパーティー収入など3059万円を記載せず、虚偽記載したとして略式起訴され、すでに有罪が確定しています。
【議員側】
▽安倍派でその後、党を除名処分となった池田佳隆衆議院議員政治資金収支報告書にうその記載をしたとして、政策秘書とともに逮捕・起訴されました。
自民党を離党している大野泰正参議院議員と秘書が在宅起訴。
議員辞職した谷川弥一・元衆議院議員と秘書だった娘が略式起訴され、2人はすでに有罪が確定しています。
二階派では、二階俊博・元幹事長の秘書が、略式起訴され、有罪が確定しています。
一方、特捜部は安倍派「5人衆」と呼ばれた松野・前官房長官、高木・前国会対策委員長、世耕・前参議院幹事長、萩生田・前政務調査会長、西村・前経済産業大臣、座長を務めた塩谷・元文部科学大臣や、事務総長経験がある下村・元政務調査会長二階派の会長を務めてきた二階・元幹事長ら、派閥の幹部からも任意で事情を聴いてきました。
しかし、いずれも派閥の会計責任者との共謀があったと認めるのは困難だと判断され、立件されませんでした。

◆86人の報告書訂正を確認

今回の事件を受けて、自民党の派閥と、派閥に所属していた国会議員らが、政治資金収支報告書を相次いで訂正しています。
【安倍派「清和政策研究会」】
収支報告書の保存が法律で義務づけられているおととしまでの3年間に記載していないパーティー収入が4億3588万円あったとして、政治資金収支報告書を訂正しました。さらに、記載されていなかった当時の所属議員や元議員らの政治団体への派閥からの寄付、4億2726万円も書き加えられました。
二階派志帥会」】
おととしまでの3年間に記載していないパーティー収入が1億3614万円余りあり、当時の所属議員側への寄付が6533万円あったとして、政治資金収支報告書を訂正しています。
【岸田派「宏池政策研究会」】
おととしまでの3年分の政治資金収支報告書を訂正し、このうち2020年には記載していないパーティー収入が896万円あったなどとしています。
政治団体
一方、派閥からの支出が確認された国会議員や元議員ら、98人の政治団体の収支報告書の訂正について、NHK総務省や各都道府県の選挙管理委員会のホームページで確認したところ、28日の時点で、少なくとも86人の団体が訂正を行っていました。

【豆知識】政治倫理審査会とは

政治倫理審査会は、議員が政治倫理に関する規範に著しく違反して、政治的、道義的に責任があるかどうかを審査する場で、衆参両院に設けられています。委員が審査の申し立てをするか、疑惑を受けた議員本人が審査を申し出ることで開かれます。

審査は原則非公開で、議員本人が認めれば、議員や報道関係者の傍聴が可能になります。また、審査会での発言は、証人喚問とは異なり虚偽の証言をした場合でも偽証罪に問われることはありません。

今回は、安倍派と二階派の5人の事務総長経験者、それに、岸田総理大臣からの申し出を受けて行われます。審査会に現職の総理大臣が出席するのは初めてです。当初、申し出た5人が原則どおり非公開を希望したのに対し、野党側が公開を求めて折り合いがつかず、岸田総理大臣の申し出を受けて改めて協議した結果、報道機関にも公開する形で開催されることになりました。
一方、審査の結果、政治的、道義的に責任があると認めたときは、審査会として一定期間の登院自粛などを議員に勧告できることになっていますが、過去に勧告を受けた議員はいません。

◆政倫審 衆院でこれまで9回開催

政治倫理審査会は、衆議院ではこれまでに9回、審査のために開かれています。8回は議員本人からの申し出、1回は委員の申し立てによるものです。
▽初めて開かれたのは1996年9月で、当時自民党の幹事長だった加藤紘一氏が鉄骨加工メーカーから、みずからへの献金疑惑について弁明を行いました。
▽1998年6月には自民党山崎拓
▽2001年2月には自民党額賀福志郎
▽2002年7月には無所属の田中真紀子
▽2003年5月には保守新党松浪健四郎
▽2004年5月には自民党原田義昭
▽同じ年の11月には自民党橋本龍太郎
▽2006年2月には自民党の伊藤公介氏が、
それぞれ、政治とカネや学歴など、みずからに関する疑惑について弁明を行いました。
審査会が実際に非公開となったのは加藤氏の時の1回だけで、山崎氏、額賀氏、橋本氏の時の3回は議員の傍聴が認められました。田中氏と伊藤氏の時は議員と報道関係者の傍聴が認められ、テレビ中継も行われました。
▽2009年7月には、自民党公明党の委員の申し立てで当時、民主党の代表だった鳩山由紀夫氏の政治献金問題をめぐる審査を行うために開かれましたが、民主党の委員は抗議して欠席し、鳩山氏も出席しませんでした。
一方、参議院政治倫理審査会は議員による弁明は1度も行われていません。