パートナーシップ/理解の広がりが欠かせない(2024年2月29日『福島民友新聞』-「社説」)

 県がLGBTなど性的少数者カップルを公的に証明し、行政サービスなどを受けやすくする「パートナーシップ制度」の導入に向けた検討に着手する。県男女共同参画審議会が制度導入を県に申し入れたのに加え、市町村から県主導の制度創設を求める声があったことなどを考慮した。

 県内では伊達市が1月から制度の運用を開始している。県外でも、29都道府県が制度を創設するなどしている。導入済みの自治体では同性同士のカップルを婚姻に相当する関係と認め、公営住宅入居などの行政サービスを受けられるようにしているケースが多い。

 パートナーシップ制度は、性的少数者に特別な権利を与えるものではなく、異性同士のカップルが認められているのと同じ権利を持てるようにするのが狙いだ。県が検討着手を決めたのは妥当だ。

 制度の導入を求めた審議会会長の藤野美都子福島医大特任教授によると、制度の導入に消極的にみえる県の姿勢を理由に、県外への転出を決めた若者がいるという。制度創設が、性的少数者に限らず、多様な生き方に対して県がしっかりと配慮しているとのメッセージになることに期待したい。

 県はこれまで、若者を対象とした出前講座などの理解醸成に注力してきた。性的少数者への配慮が必要なポイントなどをまとめたハンドブックを作り、一般企業などでも活用できるようホームページで公開している。

 県が制度創設より理解醸成を重視してきた背景には、本県が住民同士の関係性が比較的希薄な都市部と、人間関係が暮らしやすさを大きく左右する郡部などの地域が混在していることがある。郡部などで性的少数者が暮らしていくには、都市部以上に周囲の理解が欠かせないとの判断は理解できる。

 県は制度の検討と並行し、幅広い年代と地域で理解醸成の取り組みを進めていくことが重要だ。

 県が制度を導入すれば、現在のように住んでいる市町村によって、カップルと公的に認められるかどうかが分かれるという状況は解消される。今後の課題は、性的少数者への配慮を社会全体にどう広げていくかだ。

 行政が婚姻と同等の関係を認めることになっても、パートナーの病気や介護などを理由に休暇などを認めるかどうかは勤務先の判断による。県には、県内の事業所に対しても、性的少数者であることを理由に働きにくいような状況がなくなるよう、勤務環境の見直しや従業員の理解促進を促していくことが求められる。

 

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