【詳報】橋本聖子元五輪相、裏金キックバック「寄付」とは書けず…処理に困って「借入金」に(2024年3月14日『東京新聞』)

 
自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件を受け、14日開かれた参院政治倫理審査会(政倫審)に、橋本聖子元五輪相が出席した。
橋本氏は、自民党内で6番目に多い2000万円超のキックバックを受けていた。
多額の裏金をどう処理し、何に使っていたのか。橋本氏の審査の模様を詳報する。(デジタル編集部、政治部)
 
キックバックを受けた総額 2057万円

これまでの橋本氏の説明は… 「会計責任者や税理士から『問題ない』と報告を受けていた」「政治不信を招き、深く反省している」(1月19日、報道陣に)

◆14:57 還流は「知っていたが裏金とは…」

自民党橋本聖子氏の審査が始まり、手元の資料に目を落としながら弁明を始めた。
2016~2019年に参院自民党議員会長、2019~2021年には東京五輪パラリンピック担当大臣を歴任し、「責任ある立場にもあったことから、自ら説明責任を果たす必要があると考えた」と述べた。
 
参院政治倫理審査会に臨む橋本聖子元五輪相=国会で

参院政治倫理審査会に臨む橋本聖子元五輪相=国会で

派閥からのキックバック分の不記載について「還付金の存在自体は知っていたが、政治資金として事務所内で適正に処理されていると思っていた。いわゆる裏金との認識はなかった」と述べた。

◆15:02 裏金の使途「政治活動に適正使用」

問題発覚後、橋本氏が自身の事務所担当者に確認したところ、派閥から2018年~2020年に計2057万円の還付金を受け取っていたことが判明したという。
その上で「私の事務所では、いわゆる使途不明分はございません」と強調。「(派閥事務局の意向で)領収書を発行できなかったために、寄付金収入としては計上できなかった。担当者は困惑の末、私個人からの借入金収入として収支報告に計上した上で、政治活動に適正に使った」と説明した。

◆15:08 「自民党議員の7割は関係ない」

質問に立った自民党牧野京夫氏は「自民党の7割の議員は関係していない」と、まず自らの党に降りかかったマイナスイメージの払しょくを訴えた。
 
参院政治倫理審査会で橋本聖子元五輪相に質問する自民党の牧野京夫氏=国会で

参院政治倫理審査会橋本聖子元五輪相に質問する自民党牧野京夫氏=国会で

牧野氏からキックバックの経緯について問われた橋本氏は、「報道で初めて知った」と説明。29年の議員生活で「まったく知ることがなかったということに関して、心苦しく責任を感じている」と話した。
橋本氏は政治資金規正法を改正する必要性について問われ、「国民の信頼を回復するためにも、厳しい改正は必要だろう」と語った。

◆15:17 還流知ったのは「10年以上前」

立憲民主党の吉川沙織氏は、橋本氏に派閥からキックバックを受けていたことへの認識を尋ねた。
橋本氏は、キックバックの慣行を知ったのは「今から10年以上前」と説明。「すべて適正に処理をされているものと認識していた」とした。
ただし、誰がキックバックを考案したかは「存じ上げない」と述べた。

◆15:42 パー券のノルマ「分からない」

安倍派では、所属議員に派閥の政治資金パーティー券の販売ノルマを課していた。ノルマを超えて販売した分をキックバックしていた。
公明党の里見隆治氏は、橋本氏のパーティー券の売り上げノルマがいくらだったのか尋ねた。
橋本氏は2022年までの5年間(東京五輪組織委員会会長として離党していた時期を除く)に、参院議員で2番目に多い2057万円のキックバックを受けていた。
橋本氏が「私には報告がなかったので、金額的には分からない」と返答。
里見氏は「当時ご存じなかったかもしれないが、事後には承知されていると思う」と重ねて聞いたが、橋本氏は「把握できていない」と述べた。
安倍派では、参院選の年の派閥パーティーでは、その年に改選を迎える参院議員に限ってノルマを設けず、実質的に全額キックバックされていたという。
この慣行についても、橋本氏は「全く私は存じ上げなかった」と説明した。
 
参院政治倫理審査会で挙手する橋本聖子元五輪相=国会で

参院政治倫理審査会で挙手する橋本聖子元五輪相=国会で

◆15:56 裏金「橋本氏からの借入金」で処理

日本維新の会片山大介氏は、キックバックされたカネをどこに保管していたのかを尋ねた。
橋本氏によると、派閥の資金パーティーが終わると、事務所の担当者が派閥事務局で現金で受け取り、事務所の口座に入金。橋本氏個人からの借入金として処理していたという。
橋本氏は「毎回、税理士の監査を受けているので問題ないという報告を受けており、私はそれ以上疑うことなく、承知をしていた」と語った。

◆16:07 寄付とは書けず「便宜的に」

国民民主党舟山康江氏は、橋本氏が安倍派から受け取ったキックバック分の取り扱いについて質問した。
橋本氏は、キックバックされた資金を自分の政治団体に橋本氏個人が貸し付けたという形にして、収支報告書に記載していた。
「政治活動として使用させていただくのであれば、収支報告書に記載しなければいけない」と橋本氏。でも、派閥からの寄付とは書けない。
苦肉の策として、「秘書が『便宜的な形で(政党支部の)借入金とするしか方法がない』ということで、そのような処理の仕方をした」と明かした。
舟山氏は「国税庁に確認したところ、政治活動への寄付は必要経費として認められるが、貸し付けは認められていない。経費として認められない以上、所得として課税対象になるのではないか」と迫ったが、橋本氏は「弁護士、あるいは税理士に確認をしたが、あくまでも政治活動としての収入であると確認している」と答えた。

◆16:19 「森喜朗先生は大変大きな存在」 

橋本氏が参院議員に初当選したのは、1995年。共産党井上哲士氏は、「1990年代後半に始まったのではないか」とする安倍派幹部の塩谷立氏の証言を持ち出し、安倍派でキックバックの仕組みが始まった時期を尋ねた。
橋本氏は「いつからどのようにそのようなことが慣行的に行われていたのかとか、そういったことは存じ上げない」と述べた。
安倍派会長を務めた森喜朗元首相は、スポーツ行政にも長く影響力を与えてきた。
井上氏は、五輪メダリストでもある橋本氏に、裏金の経緯を説明するよう「橋本氏から進言してはどうか」と促した。
橋本氏は「私自身が政治の道に進めていただいたのも森喜朗先生であり、大変大きな存在であり指導者」などと述べ、正面から答えなかった。
 

橋本聖子(はしもと・せいこ) 1964年北海道生まれ。92年のリレハンメル冬季五輪ではスピードスケートの1500メートルで銅メダル。95年の参院選自民党比例代表候補として出馬し初当選、現在5期。女性活躍担当相などを歴任。2021年の東京五輪パラリンピック組織委員会会長も務めた。