ドラッグ店の再編 人口減に先手打つ戦略を(2024年3月13日『産経新聞』-「主張」)

 ドラッグストア業界で市場シェアが25%を占める巨大連合が誕生することになった。

 流通大手イオンの子会社で業界首位のウエルシアホールディングス(HD)と、2位のツルハHDは令和9年末までの経営統合を目指すことで合意した。両社の売上高を合算すると2兆円規模となり、店舗数も5千店を超える。

 ドラッグストア業界は、食品の取り扱いを充実させて利用者の来店を促し、化粧品や医薬品など利益率の高い商品の購入につなげる戦略で市場を拡大してきた。だが、店舗数の増加による競争激化で収益性の低下を招いている。

 両社は経営統合によって仕入れや物流コストを削減するとともに、商品の共同開発を強化する。新型コロナウイルス禍を経て消費者の健康志向は一段と高まっている。魅力的な商品を豊富に取りそろえ、薬剤師による生活指導を進めるなどして、消費者が統合効果を実感できる再編につなげてほしい。

 国内の流通市場は人口減少を背景に先細りが必至とみられている。両社の経営統合はこの課題に先手を打つ狙いがある。

 ターゲットにするのは、今後の成長が期待できるアジア市場だ。積極的に海外への出店を進めてきたコンビニ大手に比べ、ドラッグストア業界は海外展開が遅れている。

 両社は経営統合によって5年以内に売上高を3兆円に伸ばす目標を掲げている。規模を拡大することでアジア市場への出店を加速し、「アジアナンバーワン企業」を目指すという。

 人口減少への対応は、ドラッグストアだけでなく流通各社共通の課題である。

 イトーヨーカ堂が北海道や東北などから撤退を決めたように、規模の大きさが必ずしも経営の安定をもたらすわけではない。地域に密着し、その土地のニーズを的確にとらえた地場スーパーなどの存在感が大きいエリアも少なくない。

 規模拡大による経営効率化や海外市場に活路を見いだす戦略を取るのか。それとも地域密着路線をさらに追求して生き残りを目指すのか。

 流通企業は日々の生活を支えるインフラともいえる存在だ。地域住民の暮らしを守るためにも、人口減少に先手を打つ生き残り戦略を急ぐ必要がある。