予防できる、検診を受ければ助かるのに… 毎年1万人がかかり、3000人が命を落とす「がん」(2024年5月4日『毎日新聞』)

高尾美穂・産婦人科医/イーク表参道副院長
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 卵巣がん膵臓(すいぞう)がんのように、がんの中には早い段階で見つけるのが難しく、気付いた時には手遅れのことが多いものがあります。その一方、早期発見が可能なのに検診の受診率は4割にとどまり、年間約3000人が命を落としているのが「子宮頸(けい)がん」です。今年度、国の子宮頸がん検診の指針が変わりました。検診がどう変わっていくのか、子宮頸がんに対してどんな対策が打てるのか、産婦人科医の高尾美穂さんに聞きました。
若い人が命を落とす子宮頸がん
 人に限らずどんな生き物でも、命を落とすような病気になるのは年老いてからのことが多いです。若い世代でかかりやすく、死に至る病というのはそんなに多くありません。そのような中で、20代、30代でもかかる方が多く、命を落とす方も少なくないのが「子宮頸がん」です。日本では1年間に約1万人が子宮頸がんにかかり、約3000人の方が亡くなっています。命を失わずに済んだとしても、治療のため子宮を失う女性も少なくありません。また、妊娠をきっかけに、子宮頸がんに気付くこともあります。この時の喜びとショックの落差は非常に大きいです。
 ただ、子宮頸がんは検査で早く見つければ、命が助かる可能性が高いがんの一つでもあります。このため、国が指針を示して国や自治体も費用を負担して検診を勧めています。この指針が改定され、今後検査の方法が変わっていくことになりそうです。
 女性のみなさんは、自治体から送られてくる子宮頸がん検診のお知らせを2年に1度、受け取っていらっしゃるかと思います。これまで、子宮頸がん検診は、20歳以上の女性に2年に1回、「細胞診」という方法で進められてきました。20~29歳の方は従来通りですが、4月以降、30~60歳の方の検診は5年に1度の「ヒトパピローマウイルス(HPV)検査」に切り替えてもよいことになりました。
 「細胞診」も「HPV検査」も、腟(ちつ)から器具を入れて、子宮の入り口から検体を採取するのは同じですが、細胞診は細胞の形が変化していないかを調べるのに対して、HPV検査はHPVが検出されるかどうかを調べます。検出されたとしたら、HPVのタイプ(型)を知ることで、より早い段階で、リスクを把握できると言えます。
 子宮頸がんの発症に大きく関わっているのがHPVです。性交渉で感染しますが、感染してもほとんどの場合自然に消滅します。ただ、そうならずに感染が長く続いた場合、細胞の形が変化していって、何年もかけてがんになります。
 HPV検査で「検出されなかった」方が、5年後に次の検査を受けるまでに「検出される」ようになることもあります。ただ、…