「政財界トップは爺さんばかりでうんざり。高齢者向け医療は過剰」楡周平氏が語る少子化【出生数75.8万人の衝撃】(2024年3月6日)

■ 人口減少で知の資産にアクセスできなくなる

 楡:人口減少社会は悲惨です。特に日本のような基本的に単一言語の社会では、真っ先に衰退するのは言葉、日本語を使う産業です。新聞・出版・テレビといったマスコミは、日本語人口が減少するにつれ、経営が維持できなくなるのは明白ですからね。

 また、専門的な教科書を販売する出版社も危ない。子どもの数が減っていけば、教科書の市場だって小さくなりますからね。最近では全ての授業を英語で行う学校が出てきています。日本人人口が減少していく時代に生きる世代には、外国語の修得が必須なのは間違いありません。

 ですが、日本語よりもまず英語というような風潮が生まれてしまうと世代を重ねるうちに、過去の日本人が積み上げてきた知の資産にアクセスできなくなるという恐ろしい時代が来るかもしれません。

 地方の伝統文化については、すでに祭りなどの多くの行事がなくなっています。地方に行ってごらんなさい。空き家だらけで人もまばら。人がいないのに、どうやって祭りや地域の伝統行事が維持できるのですか? 

 ──そもそも、『限界国家』を執筆された動機はどのようなところにあったのですか。

 楡:少子化が最大の国難だという認識があったのはもちろん、これからの日本を背負っていく若い人たちに「親世代の生き方は人口減少社会ではもう通用しない」と伝えたかったからです。

■ 大企業に入社しても出世できなければ悲惨

 楡:『限界国家』でも書きましたが、人口減少社会は、親世代の常識が全く通用しない世界に入っていくことを意味します。内需の縮小とAI(人工知能)に代表される革命的技術の出現によって、あるのが当たり前だった職業や職種が消えていくからです。

 そうした世界に生きているのに、いまだに「安定したレールに乗って生きていってほしい」と子どもを仕向ける親の多いこと多いこと。現実が全く見えていない、というか「今日の暮らしは明日も続く」と考えているとしか思えないのです。

 例えば、医者になれば安心だと子どもに語る親がいますが、患者の数が減っていくんですよ?  海外に出ようにも、日本の医師免許がそのまま通用する国は多くありません。

 昨今は企業社会で出世したくないと考える若い人が増えているようですが、大きな会社に入っても昇進できなければ悲惨ですよ。評価されてこその昇進なのですから、止まった時点でリストラ候補。出向・転籍で酷い目に遭うことは目に見えています。

これは本当に小説なのか!?
30年後の日本社会がどうなっているか調査をすると……仕事はAIにより「人間は不要」になり、働きたくても働けない人たちが続出する。また、地方の過疎化は深刻化のほう

誰がこんな国なのか? そして、この国に明日はあるのか? 経済小説トップランナーが描く、日本の未来。そしてそれを決断する若者の生きる道とは!
? 昔も勇敢も男も女も、全世代必読の未来予測小説。

 

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