自民党・財政健全化推進本部の「大いなる欺瞞」…馬車を前に進める気がない男が御者である限り日本は確実に地獄に落ちる(2024年3月13日)

このままでは日本の衰退は止まらない

馬車を「前に進める」ことの重要性

今の日本はどういう状態なのか

 御者が職務放棄しているのですから、客が激怒するのも当然です。ところが古川氏は、そんな「乗客(国民)」の焦燥や憤怒は、劣悪で危険な「ポピュリズム」に過ぎないと、次のようにレッテルをはりつつ激しく批判するのです。

 「手綱を引いたり緩めたりするときには当然、世の中には反発もある。ポピュリストには御車の役割はつとまらない。財政はポピュリストが扱ったらだめ。財政は国民の反発を恐れて良いことばかり言っているポピュリストには務まらない仕事。翻って今の財政はどうだと言ったときに、国民の反発を恐れてなのか、手綱を緩めっぱなし」

 「財政を預かっている政治家が国民の皆さん、ここは国民負担をお願いしますとか、あるいは歳出を削らしてくださいとか、言いにくいことであってもきっちり正面からごまかさずに国民に説明をしてお願いをしてこなければならなかった。我々政治家はそこから何十年逃げてきた」

 要するに古川氏は、「前に進めろ進めろ」という乗客(国民)の意見など、愚かな大衆の戯れ言だと見なしてガン無視すべきであり、兎に角、今よりももっと強く手綱を引いて、増税して、支出カットを拡大すべきだと主張しているわけです。

 では、今の日本はそういう状態なのでしょうか? つまり、古川氏が言う、「社会保障馬」「防衛馬」「公共事業馬」が牽引する「日本という馬車」は「暴走」している状態なのでしょうか? 
 決してそんなことはありません。事態はむしろその正反対の状態にあります。

 下の図を見てください。日本と世界各国・各地域のGDPの推移を表したグラフです。GDPとは(公共事業や科学技術投資等を含めた)日本が行うあらゆる活動によって産み出された価値の総量、すなわち「総生産」ですから、要するに古川氏が言うところの「馬車のスピード」です。

 ご覧のように、世界中の国々・地域が成長し続けている中、日本だけ1990年代半ばから停滞していることが見て取れます。

 これは、日本は今、古川氏が言うように「手綱を引かねばならない暴走状態」からはかけ離れていることを意味します。それよりむしろ、「手綱を緩めて、前に進めなければならない(そうしないと“ヤバい”)状態」であることを意味しています。

 すなわち、日本は、1990年以降、「手綱を引きすぎ」であり、その結果として、成長がストップしてしまったのです。そして、2010年には中国に抜かれ、今年はついにドイツにも抜かれてしまったのです。

岸田総理の任命責任

藤井 聡(京都大学大学院工学研究科教授)

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