大人に代わって家族の介護や世話をする「ヤングケアラー」の負担を軽減する一歩にしたい。
国や自治体などの支援対象としてヤングケアラーを明記した「子ども・若者育成支援推進法」改正案が国会に提出された。
国の調査によると、小学6年生の15人に1人、中学2年生の17人に1人が家族の世話をしているとされる。1日7時間以上、ケアに費やしているケースもあった。
国は自治体の体制整備や人材確保のための財政支援を実施してきた。法制化で地域格差の是正につながると期待される。18歳以上の若者も対象となり、切れ目のない支援の環境が整う。
ただ、課題もある。
ヤングケアラーについて、介護や世話を「過度に行っていると認められる子ども・若者」と初めて定義した。だが、ケアラーの状況はさまざまだ。気づいた人が、判断に迷って連絡をためらうケースもありうる。支援対象を狭めることがないよう十分に注意しなければならない。
自治体の取り組みには大きな差がある。埼玉県は全国に先駆け、2020年3月にケアラーの支援条例を制定し具体的な施策を進めている。だが、全国で実態把握調査を実施済みの市区町村は1割強にとどまる。取り組みを促す国の積極的な関与が不可欠だ。
関係機関が連携する仕組みを整えることが重要だ。多様な支援ニーズを満たすには、民間事業者やNPOなどの協力が欠かせない。
東京都品川区では昨年から、関係機関の調整にあたる「ヤングケアラーコーディネーター」2人を新たに配置した。つなぎ役を果たす人材の活用を国は後押ししていくべきだ。
どこに相談していいのかわからなかったり、自身がケアラーと気づいていなかったりする場合もある。相談窓口の拡充や当事者同士が交流する場を作ることなどが求められる。
本人がSOSを出せない場合もある。子どもと接する周りの人が気づけるよう教員やスクールカウンセラーの研修が急がれる。
ケアに携わる子どもや若者が進路や夢を諦めるようなことがあってはならない。社会で支える仕組みを作っていく必要がある。