ヤングケアラー 支援の機運 確かな形に(2024年2月28日『北海道新聞』-「社説」)

ヤングケアラーとは - 日本ケアラー連盟

 大人が担うべき家族の介護や世話をするヤングケアラーへの対応を強化する動きが加速している。
 政府は、ヤングケアラーが国や自治体による支援の対象になると明記した法案を国会に提出した。自治体の支援にはばらつきがあるのが実情で、地域差をなくし自治体に広く支援を促す狙いがある。
 道内でも積極的な動きが見られる。苫小牧市はヤングケアラー限定の支援条例案を市議会に提出した。可決されれば道内初となる。
 機運は高まっている。地域を巻き込んだ取り組みにつなげて、必要な支援を着実に届けたい。
 国の調査では、小学6年生の約15人に1人、大学生の約16人に1人がヤングケアラーであることが明らかになっている。学業や進学、就職に支障が生じ、将来に影響が及ぶことが懸念されている。
 憲法は教育を受ける権利と、子どもに教育を受けさせる義務を定めている。十分な学びの機会を与えて社会全体で育てていかねばならず、問題の放置は許されない。
 政府が提出した子ども・若者育成支援推進法改正案には、ヤングケアラーが「家族の介護その他の日常生活上の世話を過度に行っていると認められる子ども・若者」と明記された。
 さらに4月以降、相談窓口に進路支援の専門員を配置した自治体に対し、人件費などを補助する。
 これまで支援の法的根拠がなかった。法制化を機に国は自治体のサポートに注力してもらいたい。
 自治体の主体的な取り組みも求められる。
 苫小牧市の支援条例案には市や学校、保護者、医療福祉などの関係機関が連携し教育機会の確保などを進めることが盛り込まれた。条例の制定は支援の必要性を広く発信する上でも意義があろう。
 本人が支援を望むのかどうかについては、丁寧に確認し、気持ちに寄り添うことが大切だ。
 一方、本人や家族に自覚がないケースも多い。知らぬ間に負担だけが増し、学業や健康への影響が深刻化する状況も考えられる。
 道内では経験豊富なケアマネジャーらが支援を担う全道組織「北海道ケアラーズ」を発足させた。各地で当事者の交流の機会を設けて支援者も増やしていくという。
 民間と行政が連携し多角的に見守ることが、要支援の子どもの存在に気づく上で有効となろう。
 支援が必要だと子どもが自覚できるよう、ヤングケアラーとは何か、どこに助けを求めればいいかを学校で学ぶ機会も欠かせない。