生活保護最多 困窮世帯に寄り添いたい(2024年3月21日『新潟日報』-「社説」)

 新型コロナウイルス禍で家計が圧迫され、物価高が追い打ちをかけた。誰もが健康に暮らせるように、困窮する世帯に寄り添ったきめ細かな支援が求められる。

 2023年の生活保護申請件数が現行の調査方式になった13年以降で最多になった。厚生労働省によると22年から7・6%増の25万5079件で増加は4年連続だ。

 ウイルス禍で家計収入が減ったが、感染拡大が沈静化すると低所得者向けの公的支援が縮小し、食料品や光熱費などの値上げに苦しむ世帯が増えたとみられる。

 貯蓄が減り、生活保護申請を選択する人が増えているという。

 23年12月から保護を受け始めたのは1万8801世帯で、前年同月より5・6%増えた。以前から受けている世帯を含むと0・4%増え、過去最多の165万3778世帯となった。

 ウイルス禍の影響が長引き、生活を立て直せない世帯が多いということだろう。増加傾向はしばらく続く可能性があるという。深刻な状況だと受け止めたい。

 懸念されるのは、困窮する世代が広がっていることだ。半数以上が高齢者世帯だが、現役世代の申請も増えている。

 困窮者を支援する民間団体が行っている食料配布には長い列ができ、若者や女性、単身者の姿も目立つ。相談会には女性や20~40代の若年層の参加が増えたという。

 親の援助を受けられない学生など、暮らしに余裕がない若者もいる。物価高で食費を削る傾向もあり、心身への影響が心配だ。

 「物価が高く、保護費を受け取っても全部出ていって、何も残らない」と語る高齢女性は、医療機関の受診も控えているという。

 国や自治体は民間団体とも連携して実態を把握し、世代や世帯に応じた支援を進める必要がある。

 制度をよく知らない困窮者を、支援につなぐ取り組みも大事だ。

 生活保護世帯で育ち、病気や障害がある大人の代わりに家事をするヤングケアラーの子どもらのことも、気がかりだ。

 子どもの貧困や住宅確保の支援を強化する生活困窮者自立支援法などの改正案が、今国会で審議されている。

 改正案は、生活保護世帯の子どもが高校卒業後、経済的に自立する際に新生活の準備資金で最大30万円を支給するのが柱だ。

 国会は、実態に即して案の内容を精査し、貧困の連鎖を食い止めるよう議論を尽くしてほしい。

 生活保護費は、削減を掲げた自民党が13~15年に基準額を平均6・5%引き下げた。これに対し、生存権を保障する憲法に違反するとして各地で訴訟が起きている。

 当時と違い、現在は物価上昇が著しい。景気回復の実感を得られない困窮世帯を支えるには、基準額の引き上げを早急に検討することも大切だろう。