新型コロナウイルスワクチン=2022年9月、東京都港区

 

 新型コロナウイルスの治療や病床確保における公費支援が3月末に終了する。厚生労働省が全国の自治体に通知した。

 新型コロナの治療費は当初全額公費負担だった。政府は感染症法上の位置づけを5類に引き下げた昨年5月から公費支援を縮小してきた。

 患者にとっては負担増となるが、限られた医療財政の中で、位置づけ変更に合わせ通常医療に移行するのは現実的だ。混乱なく進めてほしい。

 ただ、新型コロナがこのまま沈静化するとはかぎらない。感染の動向やウイルスの変異については、引き続き監視を徹底すべきだ。感染力が強まったり、疾患が重度化したりする兆しを見逃してはいけない。

 終了する公費支援の一つが、コロナ治療薬の負担軽減だ。これまでは所得に応じて3千~9千円に抑えられてきた。

 4月以降は、例えば治療薬ゾコーバを使った場合、高齢の1割負担の人は5日分の薬剤費は5千円程度になる。公的保険では所得に応じて月額の負担上限が設定されている。厚労省は、治療費を含めても一定限度に収まるとの見方だ。

 病床確保のための医療機関への財政支援もなくなるが、通常医療移行後も、必要な病床を適切に確保してもらいたい。

 カギになるのは、4月に施行される改正感染症法の実行である。都道府県があらかじめ医療機関と協定を結び、新たな感染症が発生したときには発熱外来や往診、入院患者の受け入れを行ってもらう。

 令和6年度からの診療報酬改定により、協定を結んだ医療機関には、感染症の外来患者を受け入れたときなどに診療報酬が上乗せされる。

 現在は都道府県で協定締結の作業が進められているところだ。厚労省都道府県ごとの進(しん)捗(ちょく)を公表し、遅れている地域の協定締結を後押しすべきだ。

 新型コロナワクチンの無料接種は3月いっぱいで終わる。今冬未接種の希望者は接種を急ぎたい。6年度からは自己負担が生じ、自治体ごとに額が異なる。政府は65歳以上について低所得者は無料、それ以外は上限7千円になるよう助成する。65歳未満はより高額になる可能性がある。厚労省自治体は分かりやすく情報発信し、感染防止の備えを取ってもらいたい。